2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520122
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 幸人 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (30374169)
|
Keywords | 天神信仰 / 縁起絵 / 在地縁起 / 天神画像 / 絵解き / 神仏習合 |
Research Abstract |
多様な分野における「菅公イメージ」の収集に鋭意努めているが、昨年度に引き続いて、作品調査と資料収集、分析考察を行った。実地調査は、山口・福岡方面、関西方面、東京方面、あわせて4回行った。おもな研究成果と進捗状況は以下のとおりである。 (1)在地縁起絵について 山口県立美術館編集、松崎天神縁起絵巻七百年記念『防府天満宮展図録』に「在地縁起絵と天神信仰」と題する論考を、これまでの調査成果を盛り込んで執筆し、天神信仰における在地縁起絵の特色と意味について論じた。 (2)太宰府系縁起絵について 島根県益田市萬福寺所蔵の天神縁起絵は、本研究課題の調査で見出されたものであるが、太宰府天満宮12幅本と密接な関連があり、菅生天満宮12幅本および九州地方に伝来する諸本とともに「太宰府系縁起絵」と呼びうる掛幅形式天神縁起絵の存在を確かなものにした。太宰府系天神縁起絵の集大成と紹介を目的とする、『太宰府系天神縁起絵の世界』(太宰府天満宮文化研究所)の制作に関わり、同書に「天神縁起の系譜」「在地縁起の諸相」「大鳥居本満盛院本からの展開」等の論考を執筆し、満盛院本の場面解説も担当した。 (3)ギメ美術館本天神縁起絵について 現長岡京市に伝来したことを確認したギメ美術館本について、『長岡天満宮資料調査報告書 美術・中世編』に「ギメ東洋美術館所蔵北野天神縁起絵巻について」を執筆し、その伝来および図様の特色について論じた。 (4)松浦武四郎の天神信仰について 上記(1)に記した論文において、幕末期の文人・松浦武四郎の天神信仰についても考察した。彼が関係した西国の天満宮、菅公所縁の土地についての考察から、左遷途上の菅公を「客人としての菅公」と捉えるという新たな視点を得ることができた。この点について、これまで議論されていないものであり、「菅公イメージ」形成に重要なものと認められ、今後考察を展開していきたいと考えている。
|
Research Products
(3 results)