2011 Fiscal Year Annual Research Report
美術解剖学の教育としての今日的意義 -日本とドイツの比較・交流を通して-
Project/Area Number |
21520126
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
宮永 美知代 東京芸術大学, 美術学部, 助教 (70200194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松 佳代子 東京芸術大学, 美術学部, 准教授 (50292800)
青柳 路子 東京芸術大学, 美術学部, 講師 (70466994)
島田 和幸 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80130524)
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Keywords | 美術解剖学 / 教育 / 人体 / 書誌 / 生と死 |
Research Abstract |
1.ライプツィヒ大学解剖学研究所、ドイツ衛生博物館ドレスデンの調査と、研究者との意見交換を通して、ドイツでは人体標本の一般への展示と啓蒙への長い歴史と徹底がなされており、この点は日本との大きな相違であった。人のかたちの学びの重要性を学生や一般の人々にいかに理解しやすく伝えるか、現代的な技術を駆使した人体標本展示の多様なあり方を過去からの蓄積の重要性は言うまでもなく、日本においても等身大で人体を見る視座を育むことのできる教育と、恒久的な施設の必要性が痛感された。 2.美術解剖学の講義の一環として人体解剖見学に参加した芸術大学・美術大学の学生の見学レポートから、この機会がどのように作用しているかについて考察した。これまで期待されていた、人体構造への学びが深まるのみならず、献体者への感謝の念、自らの制作への深いところでの影響の予感、生と死への理解と意識に深まりが見られた。総じて、解剖見学が人間として重要な学びを得る機会であったことが導かれた。 3・ドイツでユニークな美術解剖学を行っていたガルシュケ教授の遺族を訪ね、氏のスケッチや鳥類の解剖の内容を一部資料化することができた。ドイツの美術解剖学に刺激を受けて、比較解剖学の学びが美術解剖学の重要な視点であることを、日本において出版により一般に問うてゆくことを企画し、2012年に『動物デッサンー美術解剖学を基礎として-』(仮題)の出版を行う目処が立った。 4.明治時代に日本にもたらされた初期の美術解剖学について、森鴎外、久米桂一郎、黒田清輝らの美術解剖学への取り組みを浮き彫りにする展覧会を企画し、『美術解剖学-人のかたちの学び』展として当居国立博物館本館にて2012年7月に実現される目処が立った。本展は研究成果の一般への発信の一つでもある。 5.これまでの研究をまとめた成果報告書を作成しつつある。
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