2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520146
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
宮崎 まゆみ 宮崎大学, 教育文化学部, 教授 (60142543)
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Keywords | 日本音楽史 / 箏曲史 / 箏 / 宮廷音楽 / 筑紫箏曲 / 当道箏曲 / 雅楽 / 近現代箏曲 |
Research Abstract |
日本の箏曲は、平安時代の宮廷箏曲と、宮廷箏曲から誕生した筑紫箏曲と、筑紫箏曲から枝分かれした当道箏曲と、宮廷箏曲の一部を整理改変した現行雅楽箏曲と、宮城道雄らが創始した近代箏曲と、近代箏曲の延長線上にある現代箏曲の6種類があるが、それらの各箏曲の音楽的特徴を決定付けているのは、それらに使用される奏法であることに着目し、各奏法を調査してきた。当該年度は、現代箏曲の演奏家への取材や楽譜入手を基に、現代箏曲の奏法を中心に調査した。 その結果、現代箏曲の奏法については、特に意識的に従来の奏法が取り入れられる傾向にはないことが判明した。したがって、特に奏法と呼ぶべき一定音型の存在もあまり無く、作曲者が作った音楽を単に箏で演奏するという状況にあると推測された。このことは、箏曲史から見ると大変重要な危機感を抱かずにはいられない。なぜなら、箏に限らず楽器には、それぞれ楽器としての特性や限界があり、それらを意識下に様々な奏法が生まれてきた。それらに捕われる必要はないが、それらを無視しての作曲は、箏で弾く必然性が危うくなり、ピアノで弾いたほうが効果的だったりする事態を招く場合もある。また一方では、奏法より箏の音色に着目し、その音色の美しさを最大限引き出すために、速いテンポで次々絃を鳴らして音がとぎれないようにし、音色を固まりとして追究している作品も生まれている。なお現代箏曲の興味深い現象として、テンポがゆっくりの曲の場合、演奏家たちは偶然にも平安時代の宮廷箏曲がそうであったように、左手を使って余韻装飾をしている。
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