2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520154
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
渋谷 哲也 東京国際大学, 人間社会学部, 准教授 (90438789)
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Keywords | ドイツ映画 / ドイツ文学 |
Research Abstract |
平成23年度はアルスラン監督を日本に招待し、上映と討論を行うことを中心的な課題とした。アルスランの近年の作品は移民やトルコをテーマとせず、これまでのトルコ系移民2世の映画という観点では簡単に考察できるものではなくなっている。だがむしろこれを契機に、当初の研究課題である「移民映画」の枠組みを拡張する可能性を探った。つまり「移民映画」の定義の一つとして、移民の出自を持った監督の作品である点を考慮するなら、そこに文化的アイデンティティについての紋切り型の思考に対抗する別のアイデンティティ形成がなされるのではないかと問いかけることである。まずは前年度のドイツ学会での発表に基づき小論文を書き上げ、ドイツ学会誌に寄稿した。ここでは映画における「移民」の表象の方法が、まさに映画の題材にかかわらず、その基本的な様式性や監督の政治意識と深く結びついていることを考察した。 また10月にアテネ・フランセ文化センター主催の上映会において、ドイツにおけるトルコ系移民1世を主題とした映画『40m^2のドイツ』(1986)の日本初上映を行い、その後過去から現在にかけてのドイツでの移民映画の変化を概観する講演を行った。 アルスラン監督招聘は、本来5月を予定していたが、東日本大震災とそれに基づく国内での混乱により延期を余儀なくされ、結局平成24年3月初旬にようやく実現し、5泊6日の日本滞在の中で4日間に渡って異なる会場で上映会とディスカッションを行った。上映ホールで一般観客を前に2度、また映画美学校の学生を前に特別講義と質疑応答、そして一度は大学でのゼミナールとして、映像の一部を映写しつつ全作品について討論を行った。アルスラン監督の作品について多面的な議論が行えただけでなく、監督の文化的アイデンティティに関する考察を存分に聞くことができた。こうした成果は23年度内に何らかの形にするのは時間不足であったため、24年度に論文の形で随時発表してゆく予定である。
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Research Products
(3 results)