2009 Fiscal Year Annual Research Report
ゴシック・リヴァイヴァルとラファエル前派―建築と絵画の芸術文化的総合
Project/Area Number |
21520166
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
近藤 存志 Ferris University, 文学部, 准教授 (00323288)
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Keywords | ゴシック・リヴァイヴァル / ラファエル前派 / ジョン・エヴァレット・ミレイ / 高教会主義 / 中世趣味 / ヴィクトリア朝 / イギリス美術史 / デザイン史 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀イギリスにおいて同時代的に展開したゴシック・リヴァイヴァルのデザイン運動とラファエル前派の絵画運動の精神的類似性に注目し、建築や絵画、デザインといった分野の違いを超えて総合的に展開したヴィクトリア朝ゴシックの精神と全容を、その原動力となった19世紀イギリスの<中世趣味>や<中世回帰的傾向>との関わりから明かにすることを目的としている。 平成21年度は、特に本研究課題を形成する3つの視点、1、ヴィクトリア朝芸術における中世趣味・ゴシック主義の系譜、2、ヴィクトリア朝芸術の諸作品にアングロ・カトリシズムが与えた影響、3、中世を理想化するにいたった精神構造について、それぞれ資料収集を行うとともに、その過程で得られた知見を数編の論文として発表した。 具体的には、まずラファエル前派の絵画制作に対してゴシック・リヴァイヴァルが与えた影響について、ジョン・エヴァレット・ミレイの代表作である《両親の家のキリスト》を事例として検討し、19世紀中葉のゴシック・リヴァイヴァルのデザイン運動が重視した<高教会的キリスト教信仰のあり様>が実際の教会建築のみならず、同時代の絵画に対しても重要な影響を与えたことを論じた。第二に、ラファエル前派の絵画運動とゴシック・リヴァイヴァルのデザイン運動が中世を理想化するにいたった重要な要因として19世紀イギリス社会がかかえていた社会問題があることに注目し、特に功利主義的社会傾向の中で生まれた社会的弱者に対する<無関心>な態度が、<克服されるべき課題>として、ヴィクトリア朝期の建築、絵画、デザインの諸分野において鋭く認識されたことを論じた。
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Research Products
(5 results)