2010 Fiscal Year Annual Research Report
耳鳥齋と江戸時代の戯画-漫画・アニメーションの源流
Project/Area Number |
21520172
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
中谷 伸生 関西大学, 文学部, 教授 (90247891)
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Keywords | 耳鳥齋 / 戯画 / 江戸時代 / マンガ / アニメーション / 與謝蕪村 / 大坂画壇 / 版本 |
Research Abstract |
現代のマンガ、アニメーションの源流としての江戸時代の戯画について、その特質と近代・現代につながる特質について研究を進めた。とりわけ、昨年度に引き続いて、これまで研究があまり進んでいない大坂の戯画作者の耳鳥齋の戯画について調査研究を行った。 平成22年度は、前年度に続けて作品調査を中心に研究を進め、大阪、京都、兵庫、島根、東京、福岡、岡山、三重、愛知に出張し、所蔵者を訪問し、作品の写真撮影、戯画に関する文献収集などを行った。所蔵者としては、各地の美術館、博物館から、個人まで多様に広がっており、出張による調査研究によって資料の収集がなされ、一定の研究基盤が固まったと考えている。その結果、新しい作品の発掘や珍しい文献の発見があったことから、大きな成果を上げることができた。ただし、3年間の研究計画の内容に照らしてみれば、やはり約3分の2程度の成果であることも否定できず、23年度の調査研究の進展が望まれる。支出については、出張費、絵画資料の購入費、図書費などが中心で、その他には学会発表などに関係する費用が大半を占めた。 また、公表した業績としては、耳鳥齋を含めた顔の研究、それと関連のある同時期の浜田杏堂の画帖(関西大学博物館紀要第16号)の研究、耳鳥齋と大坂の戯画の研究における枠組みを論じた論文などを各種の学術雑誌等へ掲載した。 耳鳥齋の戯画は、贋作も多いため、直接、実作に当たっての調査が不可欠であるが、これまでの調査によって、多くの新資料を見出したことから、日本美術史の研究に寄与すること大であると考えられる。この調査を続けることで、耳鳥齋の戯画はもちろんのこと、研究の立ち遅れが目立つ江戸時代の戯画についての新たな研究が深化することは間違いない。その成果から、現代のマンガ、アニメーションの成り立ちについても、一定の解明がなされるに違いない。江戸時代から現代に至る戯画史の特質を明らかにすることは、日本美術史研究において大きな意義をもつと考えられる。
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