2010 Fiscal Year Annual Research Report
シラク政権下における美術館構想ーケ・ブランリー、ルーヴルを事例に
Project/Area Number |
21520174
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Research Institution | Kurashiki University of Science and the Arts |
Principal Investigator |
松岡 智子 倉敷芸術科学大学, 芸術学部, 教授 (90279026)
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Keywords | ジャック・シラク / ルーヴル美術館 / ケ・ブランリー美術館 / シラク大統領美術館 / 国立移民史博物館 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、本年度も日本では入手困難な文献資料、とりわけルーヴル美術館とケ・ブランリー美術館に関するものや、シラク政権下における文化政策に関する資料の収集を継続的に行った。 それらに基づく研究成果の一部は、論文「ジャック・シラクの美術館構想に関する一考察」(『倉敷芸術科学大学紀要』第16号、2011年)文で紹介している。本稿では最初に、起源であるパリの人類博物館(1881年設立)と植民地博物館(1931年設立)からケ・ブランリー美術館設立(2006年)に至る経緯について、主にルーヴル美術館を含めた、パリの美術館・博物館再編との関係からたどってゆく。また、その前段階として2000年、ルーヴル美術館内のパヴィヨン・デ・セッションに、人類博物館と、前述した植民地博物館を改編させたアフリカ・オセアニア美術館の所蔵品を中心としたギャラリーが設立された経緯についても言及した。そして、これらの構想から実現に至るまで、ジャック・シラクの強い意志と、フランス共和国大統領としての政治力が関与していたことを明らかにし、そうしたシラクの動機について、「非ヨーロッパ」の文明や美術に幼少期から強い関心をもった精神的側面から考察した。さらには今回の調査で初めて見学した、フランス中部に位置するシラク大統領美術館(2006年設立)もまた、彼が常に主張する「文化を超えた対話」のための行動の軌跡を贈呈品によって紹介するもので、我が国ではあまり知られていないが、シラクの思想を理解するうえで非常に重要な美術館であると言える。そして、アフリカ・オセアニア美術館を閉館させ、内部をリニューアルして2007年に開館した国立移民史博物館(起源は植民地博物館)もまた、現代フランス社会の諸相を反映させた、シラク政権下におけるもう1つの美術館として位置づけるべきであると理解した。
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