2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520186
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
中丸 宣明 山梨大学, 教育人間科学部, 教授 (80198184)
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Keywords | 日本近代文学 / 話芸 / 物語消費 |
Research Abstract |
三遊亭円朝の人情話および落語の速記の発表状況についての基礎調査を遂行し成果を得た。具体的には、明治二十年代において、小新聞に寄生するかたちで流通した読み物雑誌における講談落語といった話芸の掲載状況およびその中における円朝作品の位置について調査した。それらの雑誌は、十九世紀(文化文政期を中心とする)以来の草双紙の流通形態と読者を受け継いだものであり、物語内容に関しては時代とその規制により異なるものの、その物語構造が円朝の生きた明治期の人情生態にかたちを与えたものであるが、その具体的ありよう、円朝位置づけの考察の基礎的段階と位置づけられるが、そこにおける顕著な成果としては今まで一般には知られていなかった「文の錦」連載の円朝速記の確認が上げられる。また「人情世界」「有喜世の花」等の諸雑誌の調査においても同様の発見が少なくなかった。さらに、円朝の晩年の作である幕末維新期の北海道に取材した「椿説蝦夷訛」「蝦夷錦故郷之土産」の「やまと新聞」の初出の調査および本文校訂を行った。ここでは、今まで散逸していたと思われ国会図書館のマイクロフィルムにも未収録であった福島県立図書館所蔵新聞原本をもとにして調査に当たった。これは円朝作品の流通形態およびその過程における本文異同の分析を含むものとして本研究の一つの柱であるが、同時に来春以降刊行予定の「円朝全集」に収録予定の本文であり、その解説を含んで本研究の成果となるべきものである。
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