2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520186
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
中丸 宣明 山梨大学, 教育人間科学部, 教授 (80198184)
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Keywords | 日本近代文学 / 物語消費 / 話芸 |
Research Abstract |
21・22年度に行った三遊亭円朝の長編創作人情話の近代文学成立に与えた影響を調査研究するための基礎作業は大きく下記の三項であった。 1、やまと新聞を中心に円朝作品の新聞初出本文の調査収集 2、やまと新聞を中心に円朝作品の雑誌初出本文の調査収集 3、大川屋本・法令館本など貸本として流通した円朝本の調査 本年度は、その成果に基づき、標記研究内容を深化させるために必要な論点を以下の2点の通り抽出し、考察を進めた。 (1)「蝦夷錦故郷家土産」および「椿説蝦夷なまり」の調査研究 (2)明治期の戯作雑誌「文の錦」所載の「離魂病」の調査研究 (1)については、その二作品の初出の「やまと新聞」は幕末明治期の草双紙などの読者を受け継ぐメディアであるが、その速記者の小相英太郎による本文の分析を行った。具体的には本文中の、一見すると書き間違いや変則の日本語と見られる箇所の分析を通じて、それが円朝の発話の忠実な再現を目指す本文であることを析出した。そして、その本文が上記基礎研究3で探索された諸単行本本文に整えられていく課程の中で円朝作品が完成されていく課程を考察した。 (2)については、「文の錦」「人情世界」「有喜世の花」といった、新聞に従属するかたちで出版されながら、小新聞から脱却しようとする過程で、新聞が排除した戯作的要素の受け皿となった雑誌であることを明らかにし、その中で円朝作品が受け継がれ受容されていく様態が、明治20年代から30年代における読者層の変化およびマスメディアの進展の動向との絡みの中で明らかにされた。
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