2011 Fiscal Year Annual Research Report
浄土真宗と和歌―真宗仏光寺派と桂園派の関係を中心として―
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21520191
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
田中 仁 鳥取大学, 地域学部, 教授 (80217067)
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Keywords | 浄土真宗 / 和歌 / 真宗仏光寺派 / 桂園派 / 歌壇 |
Research Abstract |
本年度は、(1)「出張して行う調査」、(2)「鳥取において行う調査・研究」を計画にのっとり実施した。(1)としては、本山仏光寺、蓮光寺所蔵の和歌資料と本願寺派門徒である柏原家の資料を調査し、写真撮影した。これらのうち、慈照山蓮光寺所蔵資料によって、蓮光寺住職の理山が景樹の和歌、歌論にしたがって歌を詠み、景樹周辺の歌人や仏光寺派寺院の住職・門徒と歌会の開催や歌友との交流などの文事を展開していること、さらに、天保の飢饉にさいしては景樹にならって救民活動を行ったことがわかった。これは桂園派の形成・展開に、真宗仏光寺派の教団組織、交流圏が大きく寄与したこと、和歌・歌論が「文学」の枠内にとどまらない影響力を有することを具体的に示す事例である。また、本山佛光寺所蔵和歌資料の調査により、江戸幕府の寺社統治の一環として、佛光寺が准門跡寺院とされ、門主が宮廷社会の一員と位置づけられ、公家たちと交流・交際する機会がふえたことが、本山佛光寺に和歌・歌人が入るきっかけになったという推測が可能になった。これは仏光寺派だけに限られたことではなく他の真宗諸派についても同様の事情があって、浄土真宗と和歌との密接な関係を形成する要因の一つなのではないかと思われる。 次に(2)としては、『理山日記』天保五年から天保十二年までの固有名索引を作成した。また、当初の計画にはなかったが、鳥取市鹿野の加知弥神社の宮司を代々勤めている飯田家に伝わる和歌資料の調査により、本居大平・衣川長秋門下の飯田秀雄の和歌の門人のなかに、真宗寺院の住職が複数いたことが判明した。さらに調査を続けることによって、和歌と浄土真宗との関係の考察に関する新たな視点を得ることができるのではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年は浄土真宗の宗祖親鸞の750回大遠忌にあたるため、浄土真宗の寺院では法要やそれにちなむ種々の催しが開かれ、資料調査のための訪問がためらわれることがあった。
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Strategy for Future Research Activity |
浄土真宗寺院・門徒家に伝わる和歌にかかわる資料を調査・研究することは従前の計画のとおりである。それにくわえて、鳥取市鹿野の加知弥神社宮司飯田家に伝わる資料の調査により、同社神主飯田秀雄(寛政3年・1791~安政6年・1859)、その二男飯田年平(文政3年・1820~明治18年・1886)の門人・知友に複数の浄土真宗寺院の住職がいたことが判明した。そのため、加知弥神社飯田家資料につき、浄土真宗と和歌との関わりに関する調査を実施する。なお、平成24年度末に真宗僧の詠歌もふくむ歌合数種を『加知弥神社飯田家資料稿3』として翻刻する予定である。
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