2009 Fiscal Year Annual Research Report
近世琉球における和文学の研究-擬古文物語の考究および和歌の基礎的研究-
Project/Area Number |
21520195
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
萩野 敦子 University of the Ryukyus, 教育学部, 准教授 (90343376)
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Keywords | 近世琉球の和文学 / 擬古文物語 / 平敷屋朝敏 / 『萬歳』 / 『貧家記』 / 『苔の下』 |
Research Abstract |
本研究は、副題が示すように二本の柱(「近世琉球に生まれた擬古文物語の考究」と「近世琉球で詠まれた和歌の基礎的研究」)から成るが、当該年度は、そのうち前者「擬古文物語の考究」を進めた。 近世琉球を代表する和文学者である平敷屋朝敏によって書かれた四編の擬古文物語のうち、前年度までの研究において、四編の本文整定作業と、『若草物語』の注釈作業とその成果を生かした論文化、『萬歳』の注釈作業までは終了していた。当該年度はそれに引き続き、『萬歳』について主として『狭衣物語』との関係を中心に物語生成の経緯をたどったものを論文化した。また、『貧家記』『苔の下』の二編の注釈作業を進め、先行研究・先行注釈を整理し終え、私見・私注を加える作業を行っている。七割方済んでおり、新年度の前半期で終了できそうである。 当研究の意義は、近世琉球の和文学において極めて色濃いヤマトの王朝文学の影響を確認することにより、これまで「琉球・沖縄の文学」として別個に扱われたきた近世の和文学を、ヤマトの王朝文学の系譜上に位置づけるところにある。それは、日本文学史を地域・辺境から捉え直し、異議を申し立てることにほかならない。 同時に、近世琉球の和文学は琉球独特の文化・芸能である琉歌・組踊のモチーフとも密接に関連しているため、当研究は、近世琉球をめぐる文化・文学事情を総体として理解するために必要な視点を呈示することにもなろう。
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Research Products
(2 results)