2011 Fiscal Year Annual Research Report
心敬の文学作品における創造と新撰菟玖波文学圏への影響についての総合的研究
Project/Area Number |
21520197
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
伊藤 伸江 愛知県立大学, 日本文化学部, 教授 (30259311)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 勲 聖心女子大学, 文学部, 名誉教授 (90007948)
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Keywords | 心敬 / 宗祗 / 正徹 / 連歌 / 和歌 / 法華宗 / 落葉百韻 / 寛正六年正月十六日何人百韻 |
Research Abstract |
本年度は、『落葉百韻』の注釈を完成させ、百韻全体に及ぼされた宗匠心敬の運営方法と影響力をはかり、当時進んでいた式目改訂作業との関わりを考察すると共に、これまでなした具体的な百韻の検討から解明しえた心敬の句、連歌論の特徴についての論を複数まとめた。 心敬の表現分析に必須と思われる作品として『落葉百韻』を選び、その注釈と検討を行った結果、法華宗徒、武士を中心とする関東下向以前の心敬の交友関係、彼の属した文化圏の様相が解明され、心敬の句風の特徴と正徹の和歌表現との密接な関わり等が検証できた。『落葉百韻』内で使われた心敬句の本歌取手法については、注釈に基づき論文を執筆し、査読雑誌に掲載した。また、前年度に行なった心敬と宗祀の同座する『寛正六年正月十六日何人百韻』の注釈により、心敬の宗祇にあてた連歌指導書『所々返答』第三状がこの百韻にもとづき記述されていたことがわかり、宗祇は、この百韻中で万葉歌の詞を意図的に多く使用したことも新たに明らかになったため、こうした点について詳しく研究した論文を査読雑誌に掲載した。さらに、心敬の連歌宗匠としての百韻のさばき方について、今回、連歌百韻の張行方法についての小論を『落葉百韻』の注釈に付載する形でまとめた。これまでの連歌研究では、注釈自体が少なく、こうした方向からの考察に乏しかったが、本研究で百韻注釈の数を重ね、百韻の態様を比較検討していくことで、宗匠の連歌運営の解明も一層明らかにすることができ、式目研究にも利するものである。
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