2010 Fiscal Year Annual Research Report
宗教・文芸テキストを横断する〈中世日本の性と身体〉についての総合的研究
Project/Area Number |
21520219
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
小川 豊生 摂南大学, 外国語学部, 教授 (50169190)
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Keywords | 日本中世 / 身体論 / 理趣経 / 性 / 注釈 |
Research Abstract |
本研究は、各文庫に所蔵される中世宗教・文芸テキストの写本の発掘を通して、諸領域を横断しつつ、中世日本における<性と身体>の地平をきりひらくところにその目的がおかれている。本年度は昨年に引き続き、中世の宗教テキスト群の読解に供するための関連文献の収集にさらにつとめた。 まず、年度当初には中世身体論の重要な展開基盤となった『瑜祗経』注釈に関わるテキスト群の他、あらたに『菩堤心論』や『理趣経』をめぐる注釈テキストの調査・収集にとくに重点をおいた。それらを多数所蔵する金沢文庫および高野山大学図書館に赴き、写本類の調査収集につとめた。年度のはやい段階でおこなった以上の訪書・収集の作業によって、その後の研究の見通しが大きく立てられたことは幸いであった。とくに『理趣経』の注釈史を概観して、本研究にとって極めて重要な課題が多く浮上してきたので、来年度はさらに充実した訪書をすすめていきたいと思う。現在これらの文献を十三~十四世紀の文化字へと導入する研究はほとんど看取することができない。今回の収集資料は、その読解を通じてこの空白を埋めることが可能となるものと予見するところである。 次に国文学研究資料館に赴き、関連マイクロ資料の調査・収集を行い、昨年度の収集に漏れたものを調査・収集した。この作業を通じて、日本中世における身体論や性の理論の究明にいまだ未発掘のままの重要な資料が多数存在することにあらためて気づくことができたのは大きな成果であった。 同時に,この調査のなかで、経典類のテキストに限らず、五臓論や医書のテキストのうちにも、本テーマを推進していくうえで重要な資料群が存在していることも判明した。それらについては、来年度の研究において継続収集したいと考えている。 以上の成果の一部を後掲の「研究成果」に記したように2本の論文にまとめることができた。なおまた現在もこの成果にかかわって論考を執筆中である。
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Research Products
(2 results)