2011 Fiscal Year Annual Research Report
黒川家旧蔵資料を通して見た江戸期知識層の形成と知識流通に関する研究
Project/Area Number |
21520220
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
廣嶋 進 神奈川大学, 経営学部, 教授 (30208871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤實 久美子 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (90337907)
新美 哲彦 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (90390492)
海野 圭介 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (80346155)
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Keywords | 国学 / 蔵書形成 / 黒川文庫 |
Research Abstract |
本研究を構成する三つのテーマのうち、(1)「江戸後期の蔵書形成とじ辱籍流通に関する検討」については、昨年、一昨年度の成果である、黒川文庫蔵『光源氏物語抄』(いわゆる異本『紫明抄』)、同蔵『花屋抄』に引き続き、藤波家に伝えられたことが確認できる同蔵『休聞抄』に着目し、公家に伝来した典籍の国学者への流通経路の問題から発展的に展開した古典注釈書の流通の問題点を整理した。具体的な成果としては、『正宗敦夫収集善本叢書第1期第3巻 休聞抄1』、『同第4巻 休聞抄2』を刊行した。(2)「江戸期知識階層の知織基盤形成とそのネットワークに関する検討」については、主として歌書類を中心に、上田秋成(1734-1809)、村田春海(1746-1811)、岸本由豆流(1789-1846)等の注説の書き入れをもつ伝本の調査を継続した。また、国学者の関与した物語注釈書とそれらの書き入れ本についても調査を行い、作品それぞれの個別調査に基づき示されていた従来の理解の修正を試みた。筆跡の同定や記載内容の未見の他本との比較に若干の課題を残したが、これらについては今後も補正を試みたい。また、上記、(1)(2)の調査の途上に重要性が改めて確認された書籍に捺印された蔵書印については、大凡概観はしたが、書影の収集とデータ集積やその活用(データベース化等)については今後に課題を残した。(3)「江戸期の出版統制と蔵書形成に関する相関的検討」については、基礎的な調査と資料整備を進め、関連する論考を成文化した。
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