2009 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀イギリスにおける『乞食オペラ』プロジェクトの歴史的意義
Project/Area Number |
21520229
|
Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
吉田 直希 Otaru University of Commerce, 言語センター, 教授 (90261396)
|
Keywords | オペラ / 犯罪 / 国民国家 / 小説 / 公共圏 / エロティカ |
Research Abstract |
『乞食オペラ』はロンドンの暗黒世界を舞台にスリ、追い剥ぎ、殺人、裏切り、縛り首などのシーンをふんだんに盛り込んでいるものの、犯罪のリアリズムを追求した作品ではない。むしろ18世紀全体を通して人気のあった犯罪文学のパロディと考える方が自然であり、内容と形式の不一致が生み出すユーモアがこの作品の最大の特徴と言えるだろう。本研究では、このユーモア感覚を現実批判の有効な手段ととらえ、フィクショナルな世界の構築がいかに重要であったかを考察するものである。そこで、小説と国民国家の誕生を結びつける議論を組み立てるために、今年度は特に『乞食オペラ』を次の2点から精査し、18世紀ナショナリズムの可能性と限界について研究を行った。(1)バラード・オペラの国民性(イタリア・オペラ、演劇検閲法、文学的パトロン、小説の勃興)についての理論的考察と歴史資料の収集(2)表現の自由と礼節推進運動(プライバシー、コーヒーハウス公共圏、エロティカ、英語辞典)に関する理論的検証(1)については9月にスタンフォード大学においてJohn Bender教授と研究会を行い、同時に同大学Green Libraryにて主にECCOを用いて資料の収集を行った。また(2)については東北英文学会シンポジウム「英文学におけるジェンダー/ジャンル」を企画し、その司会を務めつつ、多方面からこれまでの研究を再検討した。さらに、アメリカ18世紀学会のパネルThe Representations of East Asia in the Long Eighteenth Centuryの司会を務め、アジア表象の視点から18世紀イギリス公共圏の諸問題について議論を行い、次年度計画の土台を固めた。
|