2010 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカにおける大衆向けロマンス出版事業とその影響に関する文化論的研究
Project/Area Number |
21520246
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
尾崎 俊介 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (30242887)
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Keywords | 米文学 / 大衆文学 |
Research Abstract |
本年度に関しては、まず当初予定していたように1990年代以降の大衆向けロマンスの動向を追い、その中でも特に超能力者をヒーローに据えた「パラノーマル・ロマンス」の流行に注目、ヒロインとヒーローの恋愛劇の中にSF的な、あるいは怪奇小説的な要素を取り入れたロマンスがいかにして登場し、またそれが何故アメリカ社会の中で大衆的な人気を得て行ったのかについて調査と考察を巡らせ、その成果は「吸血鬼を「ロマンスする」:ヴァンパイア・ロマンスtwilightについての一考察」(『外国語研究』(愛知教育大学外国語外国文学研究会)第44号所収)という論文にまとめることが出来た。 またこれに加え、1919年に書かれ、20世紀大衆向けロマンスに登場する「ヒーロー像」の形成に大きな影響を与えたと言われるE.M.HullのThe Sheikという作品の分析も並行して行ない、この作品とその背後にある19世紀末(ヴィクトリア朝末期)のイギリスに生じた「女性旅行者」の増加という社会現象とを関連付けた考察を行った。この方面の研究については、「シークの時代:20世紀初頭の砂漠捕囚ロマンス」(『ことばとコミュニケーションのフォーラム』(開拓社刊)所収)と題した論文にまとめ、公表した。なおこれらの研究に関し、ハーバード大学ワイドナー図書館、及びボストン大学ムガール記念図書館で得た資料を活用した。 さらに本年度は金城学院大学大学院英文学会からの依頼を受け、大衆向けロマンスの出版史に関する講演を行なうなど、この新しい学問分野に関する啓蒙活動にも積極的に取り組んだ。
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