2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520249
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森岡 裕一 大阪大学, 文学研究科, 教授 (20135635)
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Keywords | 禁酒小説 / ハリエット・ストウ / 『アンクル・トムの小屋』 / 支配 / 依存 |
Research Abstract |
ニューヨーク公立図書館やハーバード大学、コロンビア大学等の大学図書館にて資料収集につとめ、T・S・アーサの後期禁酒小説や、Josiah Allen's Wiife, Sweet Cicely, Mary Dwinell Chellis,Bread and Beerなどの作品、およひ各種禁酒団体により発行されたパンフレット等貴重な文献を多数得られたことが第一め収穫である。 また、アメリカにおけるこの分野の専門家と意見を交わす機会も得られ今後の研究を推進するうえで貴重な示唆が得られた。それらを含め、これまで収集した資料について引き続き分析を続けており、その成果の一端は平成21年度大阪大学における講義で披露している。今年度の研究の中心は『アンクル・トムの小屋』を中心とするハリエット・ストウ研究であり、その成果は大学での講義で紹介するとともに、別記の2本の論文で世に問うことができた。『アンクル・トムの小屋』に見られる奴隷制度の支配と依存の関係は、ストウ文学のもうひとつの重要テーマである酒への依存のモチーフと重なっている点、また、それが男女の権力構造とも密接に関わっていることを明らかにし、ストウ文学への新たな視点を提供した。 同時に、飲酒/禁酒の視点が奴隷解放、女性解放と並び、19世紀アメリカで支配的な解放の言説を構成するものとして非常に重要な位置づけにある点を解明しえたことは、これまで光め当たってこなかった19世紀アメリカ精神史の側面を理解するうえで意義深いものと言える。
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