2010 Fiscal Year Annual Research Report
ウィリアム・フォークナーの技法と人種・階級・ジェンダーの境界消失のテーマ
Project/Area Number |
21520257
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大地 真介 広島大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (50330650)
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Keywords | アメリカ文学 / ウィリアム・フォークナー / 人種 / 階級 / ジェンダー / アメリカ文化 / アメリカ社会 |
Research Abstract |
筆者の研究は、アメリカを代表する作家の一人ウィリアム・フォークナーの小説とアメリカの社会・文化との関係についての研究に貢献することを目的としている。具体的に言えば、フォークナーの作品の特徴である、ストーリーの時間と空間を解体する技法は、従来、作品のテーマ等とは別個に論じられてきたが、筆者は、次のような画期的な論を提示した。フォークナーの代表作は皆、南北戦争での敗北によってアメリカ南部で劇的に生じた<人種・階級・ジェンダーの境界の消失>、すなわち<支配階級の白人男性層という旧南部社会の基盤の解体>が主要なテーマであり、そのテーマが、ストーリーの時間と空間、すなわちストーリーの基盤を劇的に解体する技法によって強化されている。その研究に関する当該年度の実績の具体的内容は下記の通りである。 まず、筆者は、日本英文学会中国四国支部大会のシンポジアムで司会兼発表者を務め、「フォークナーの『八月の光』の技法とテーマ-階級・人種・ジェンダーの境界消失」というタイトルで発表した。そして引き続きそれを論文の形にし、著名な学術雑誌に投稿した次第である(現在結果待ち)。 また、現在ノーベル賞に最も近い作家の一人と言われるコーマック・マッカーシーとの比較を通してフォークナーの上記のテーマについて論文を執筆中であり、来年度に学術雑誌に投稿することになっている。 以上のように、筆者は、交付申請書の研究実施計画を基本的に達成した次第である。
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