2011 Fiscal Year Annual Research Report
ウィリアム・フォークナーの技法と人種・階級・ジェンダーの境界消失のテーマ
Project/Area Number |
21520257
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大地 真介 広島大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (50330650)
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Keywords | アメリカ文学 / ウィリアム・フォークナー / 人種 / 階級 / ジェンダー / アメリカ文化 / アメリカ社会 |
Research Abstract |
筆者の研究は、アメリカを代表する作家の一人ウィリアム・フォークナーの小説とアメリカの社会・文化との関係についての研究に貢献することを目的としている。具体的に言えば、フォークナーの作品の主要なテーマに関しては、従来、<ストーリー>の時間と空間を解体するフォークナーの技法とは別個に論じられがちであったが、筆者は、次のような画期的な論を提示した。フォークナーの代表作は皆、南北戦争での敗北によってアメリカ南部で劇的に生じた<人種・階級・ジェンダーの境界の消失>、すなわち<支配階級の白人男性層という旧南部社会の基盤の解体>が主要なテーマであり、そのテーマが、<ストーリー>の時間と空間、すなわち<ストーリー>の基盤を劇的に解体する技法によって強化されている。この研究の当該年度の実績の具体的内容は下記の通りである。 まず、伊藤詔子広島大学・名誉教授が監修する研究書『カウンターナラティヴから語るアメリカ文学』(音羽書房鶴見書店から今秋刊行)に、「『八月の光』における人種・階級・ジェンダーの境界消失-旧南部の幻影」という拙論が掲載されることが決定している。また、筆者は、「『アブサロム、アブサロム!』の技法とテーマ-人種・階級・ジェンダーの境界消失」というタイトルで論文を執筆し、著名な学術雑誌に投稿した。さらに、フォークナーの上記の技法やテーマとの比較でコーマック・マッカーシーやフィリップ・K・ディックに関する論文を2本発表した次第である。 また、フォークナーの生地ミシシッピで毎年開催される「フォークナーとヨクナパトーファ国際会議」に出席し、高名なフォークナーの研究者たちと交流して情報交換をした。 以上のように、筆者は、交付申請書の研究実施計画を達成しただけでなく、さらに実り多い研究成果を得た次第である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「9.研究実績の概要」の冒頭で述べた筆者の論の正当性を、フォークナーの4つの代表作を取り上げて実証していくというのが本研究の趣旨であり(4年計画)、その4作品のうち1作品ずつ毎年論文を執筆していることに加え、フォークナーの技法やテーマに関する他の論文も数本発表したり講演もしたりしていることから、本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
「11.現在までの達成度」で述べたとおり、本研究は当初の計画以上に進展しているので、この調子で研究を進めていく。無論、「研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点」はない。
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