2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520266
|
Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
伊東 栄志郎 岩手県立大学, 共通教育センター, 准教授 (70249241)
|
Keywords | 英米文学 / ジェイムズ・ジョイス / 東洋文化 / オリエンタリズム / ジャポニスム / イスラム / (反)ユダヤ主義 |
Research Abstract |
・ベルギー王国における国際学会での研究発表:7月にルーヴェン・カトリック大学で開催された第35回国際アイルランド文学学会(IASIL)年次大会で、「心地よい哲学:ジョイス作品における宗教的アイデンティティの和解」という題目で、学会発表を行った。これは、伊東他3名(クロアチア2名、イタリア1名)が参加するイリーナ・グルビカ(リエカ大学)主宰のパネル「言語、記憶、シンボリズム:アイルランド文学における葛藤するアイデンティティの和解」に参加する形で他の3つの発表と合わせて議論した。 ・論稿「イスラエル的及びイスラム的要素でダブリンを描くジェイムズ・ジョイスの多国籍モダニティ」は、ジョイス作品群におけるユダヤ、アラビア的要素を含めたオリエンタル・モティーフを再考することを目的とした。とくに『アラビアン・ナイト』とコーランへの引喩は詳細に分析した。ユダヤ的あるいは他のオリエンタルな要素を考察することが、ジョイスの文学的東方への旅を理解する第一歩となり得るのである。外国に暮らし、生涯を通してジョイスはダブリンを多国籍化手法で描いたが、部分的には、それは彼のキリスト教に対する双価性と東洋の他宗教の容認のおかげなのである。 ・論稿「"Bonzour""Mousoumeselles"ジョイスとジャポニスム」では、ジェイムズ・ジョイスの諸作品におけるジャポニスムの影響の可能性を検証した。ジャポニスムは、ジョイスが『ユリシーズ』を出版した1920年代前半に翳りをみせはじめ、あるいはアール・ヌーヴォーのような現代絵画に同化していった。そして、ジャポニスムがアール・デコに同化した1925年から1939年は、ジョイスが『フィネガンズ・ウェイク』を創作していたときであった。本研究は、ジョイスをヨーロッパ文化の呪縛から解き放ち、彼の作品をグローバル化/グローカル化する新しい始まりになり得るのである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジェイムズ・ジョイス作品について、今まであまり研究されてこなかった東洋文化との関わりについて、ユダヤ、イスラム、インド、東アジア、そして日本の要素を考察出来た。国際学会で発表し、その成果を論文に着実にまとめつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究「ジェイムズ・ジョイスと東洋文化の系譜学」は、これまでのところ、ほぼ当初の計画通り進んでいる。東京海洋大学と早稲田大学で開催される関東ジョイス研究会や京都ノートルダム女子大学で開催される関西ジョイス読書会などで研修しつつ、今後も引き続き、年1度以上を目標に国際学会での口頭発表を研究の区切りとして成果を発表し、国際的視野から本研究を着実にこなし、発表原稿を加筆修正する形で、論文にまとめていきたい。
|
Research Products
(4 results)