2009 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス19世紀における科学の制度化が文学に与えた影響について
Project/Area Number |
21520274
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
石倉 和佳 University of Hyogo, 環境人間学部, 准教授 (10290644)
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Keywords | イギリス文学 / 科学史 / 科学制度 / ロマン主義 / ヴィクトリア期 |
Research Abstract |
平成21年度は、主に次の三つの点から研究および調査を行った。1) 18世紀から19世紀のイギリスにおける科学観について、物質界と精神界とがどのように関連づけて考察されたかという点から検討した。まず、コールリッジがディヴィッド・ハートリーの思想に影響されながら、いかにハートリーの物質的科学観を克服しようとしたかを考察した。そしてジェームス・ミル以後の連想心理学派がハートリーの物質的仮説を考慮しなかったことがその後のコールリッジ研究に影響を与えたこと、そしてハートリー思想がコールリッジにとって重要でないという見解が定説となった経緯を明らかにした。これは、ロマン主義期における物質的科学観と想像力論との緊張関係が、科学の細分化とともに理解されにくくなった点を明らかにする一つの事例である。この内容は日本英文学会全国大会で口頭発表した。論文としてしかるべき学会誌に発表する予定である。また、ウィリアム・ペイリーの自然神学理論と、1830年代に発表された一連のThe Bridgewater Treatisesについて検討を始めた。2) ジョン・キーツのLamiaについて、キーツの受けた医学教育および医術の職能集団の制度的整備の社会的背景とともに分析した。これも科学研究の専門化が文学上の潮流に影響した一つの事例として考えられるものであり、キーツが医学者としてその職能集団への帰属を認められながら、詩人としての成功を目指した事実は、医学の技能集団が社会システムの一部と化し、医術は全人的な自己実現とはなりえないという現実理解を間接的に物語るものとなっている。この内容については、British Association for Romantic Studiesの年次大会で研究発表した。3) 1820年代から1850年代までの科学的著述で重要なもの、およびそれらの研究書などについて大英図書館で調査・収集した。
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Research Products
(4 results)