2011 Fiscal Year Annual Research Report
18-19世紀イギリスの旅行記に見られる美意識とアイデンティティに関する研究
Project/Area Number |
21520275
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
天野 みゆき 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (50258282)
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Keywords | 英米文学 / 旅行記 / 美意識 / アイデンティティ |
Research Abstract |
1)チャールズ・ディケンズとジョージ・エリオットの著作を中心にアメリカとイタリアに関する旅行記の研究を行った。特に、ディケンズの『アメリカ紀行』と、その副産物とも言える『マーティン・チャズルウィット』は旅行記の虚構性、旅行記と小説の関連性という点で非常に興味深い。『アメリカ紀行』については、厳しいアメリカ批判とそこにこめられたイギリスへの批判が批評家たちに注目されてきたが、ディケンズはより普遍的な問題を提示している。すなわち、人はどんなものにも慣れるのであり、習慣化が人間を偏狭かつ無感覚にし、さらには想像力まで奪ってしまうことを繰返し描き出し、警告するのである。彼が糾弾するアメリカの奴隷制や独房による囚人管理についても、その根源的な問題は習慣化にあると言える。ディケンズは、ジョナサン・スウィフトの『ガリヴァー旅行記』における諷刺の手法を効果的に用いつつ、時代と国を超える現代的な問題を訴えているのである(論文を発表)。 ディケンズの小説における旅と川のモチーフの重要性についても研究を進めた。 2)イザベラ・バードの『朝鮮紀行』、『中国奥地紀行』における美意識、帝国意識および葛藤について考察し、『日本奥地紀行』と比較した。また、明治時代の日本を訪れた女性作家たちの旅行記とも比較することで、バードの観察眼の鋭さや優れた生活描写が明らかになった。 3)旅行記のデータベースに入力するデータを収集、作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
時間不足と予想外の資料の発見により、平成23年度に計画していたマリアンヌ・ノースの旅行記に関する研究を進めることができなかったため、全体的にやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に基づいて進めていく予定であるが、平成24年度については、平成23年度の実績をふまえて次のとおり計画を変更することとした。 1)ジェイン・オースティンおよび18世紀イギリスの女性作家の旅行記と小説の相互影響、間テクスト性を明らかにする。 2)チャールズ・ディケンズの旅行記と小説の相互影響を検証する。
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