2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520279
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
宮津 多美子 順天堂大学, 医療看護学部, 講師 (60509660)
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Keywords | スレイヴ・ナラティヴ / 奴隷制 / 南北戦争 / 母性 / アメリカ / 19世紀 / アフリカ系アメリカ人 / 家族 |
Research Abstract |
本課題では主に19世紀に発行されたアフリカ系アメリカ人(黒人)女性によるスレイヴ・ナラティヴを扱い、それらの作品における家族や母性の描写について研究してきた。平成23年度は「奴隷制の暴力と記憶の歴史化」をテーマに、奴隷女性が残したジェンダー特有の暴力の記憶とその表象および歴史化に注目した。これまで研究してきたハリエット・ジェイロブズ、ハリエット・タブマン、ソジャナー・トルース、サリー・ウィリアムズに加え、今年度はクロエ・スピア、ルイーザ・ピケット等の女性ナラティヴを扱ったが、これらの作品には売買による家族離散、奴隷所有者の道徳的堕落、キリスト教信仰および人間性の主張など、男性ナラティヴにも見られるテーマの他、今年度の課題テーマである女性特有の奴隷体験が含まれている。それは性的暴力や奴隷主の強制による妊娠・出産である。それらは、時に自分に嫉妬する女主人の描写とともに、直接的な被害者の視点から描かれている。これらの女性「性」に対する暴力は同じ母・妻である白人女性読者が共感できるテーマであることから、ナラティヴ作者・口述者の女性は、この点を強調しながら人種を超えた女性間の連携を訴えたと考えられる。これらの作品が当時の社会に与えた影響については白人女性の奴隷制廃止論者(アボリッショニスト)らの足跡が参考となった。今年度は男女のナラティヴのヴォイスを比較するため、北部から誘拐されて奴隷になり、その後救出された自由黒人男性、Solomon Northupの奴隷体験記に関する研究を行ったが、この中で自由人と奴隷の境界線という新たな論点を見出した。女性ナラティヴ研究についての研究成果の発表は果たせなかったが、今後、母性愛、家族の絆およびジェンダー特有の奴隷体験やナラティヴの社会的影響等に関する研究成果の発表に向けて準備したい。
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Research Products
(1 results)