2010 Fiscal Year Annual Research Report
舞台衣装からみるチューダー朝演劇 ー衣装調達・演出と劇団の変遷ー
Project/Area Number |
21520282
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小林 酉子 東京理科大学, 理工学部, 教授 (60277283)
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Keywords | エリザベス朝演劇 / チューダー朝 / 舞台衣装 / 官廷饗宴 / 服飾史 / ペジェント / 饗宴局 |
Research Abstract |
本研究は、チューダー朝初期に王侯お抱え劇団が誕生してからエリザベス時代に商業劇団が最盛期を迎えるまでを対象に、舞台衣装の視覚化復元を行い、[1]劇作品執筆の背景や上演の実態、[2]舞台衣装の調達とその後の流れ(購入、作り替え、売却)を中心に、英国近世演劇史をまとめることを目的としている。 平成21年度は、エリザベス朝の前・中期にあたる1590年代前半までを研究対象としたが,22年度は,チューダー朝初期饗宴の演出と衣装について研究を行った。当時の宮廷饗宴は,ペジェントと呼ばれる大型山車に演者が乗り込んで広間に登場し,貴婦人を救出したり,野人と騎士が戦うなどの芝居仕立てであった。宮廷には饗宴局が設置されるようになり,饗宴全体の演出・指揮を行い,衣装や小道具などの手配調達も取り仕切った。衣装は特別にデザインされ,仕立てられたが,1520年代後半からは在庫衣装の作り替えも盛んになった。英国宮廷饗宴についての絵画資料は一切残っていないため,英国文献と大陸諸国の絵画資料等から上記を明らかにした。 宮廷饗宴では主に,王室聖歌隊員と王や貴族お抱え俳優たちが演じていたが,ヘンリー8世代には王自身や貴族も演者として登場した。やがてお抱え劇団は,宮廷を出て各地を回るようになり,次第に職業俳優としての活動が活発化していった。宮廷饗宴で使用された衣装は,演者に祝儀として下賜されることもあり,これらは地方巡業の際の貴重な財産ともなった。エリザベス朝初期に商業劇団を結成したのは,このような俳優たちである。22年度は、ヘンリー7世,8世の宮廷で行われた饗宴について、国際学会での発表と論文発表を行なったほか,エドワード6世,メアリー女王の宮廷饗宴について研究を進めた。
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Research Products
(5 results)