2010 Fiscal Year Annual Research Report
「回帰線」アメリカ文学におけるポストコロニアル故国表象
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21520288
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
河原崎 やす子 岐阜聖徳学園大学, 外国語学部, 教授 (80341808)
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Keywords | アメリカ帝国主義 / アジア系アメリカ文学 / フィリピン系アメリカ文学 / プエルトリコ系アメリカ文学 / ポストコロニアリズム / 故国表象 |
Research Abstract |
本年度は、「回帰線」アメリカ文学系譜でフィリピン、キューバに次いで重要な、アメリカ帝国主義が残存するプエルトリコを中心とする研究を行った。まず文献研究で英語によるプエルトリコ系アメリカ文学の故国表象をする作品を抽出して分析し、その後サンファンおよびニューヨークのスパニッシュ・ハーレムを実地検証した。ハバナやマニラ同様、スペインとアメリカ植民という共通体験は数多くの遺跡などから明らかで、回帰線という文化の枠組みの有効性を再確認した。その後米国の学者との交流でグアムに関心が広まり、まずグアム系アメリカ人の作品を収集して共通するポストコロニアル故国喪失テーマを見出し、グアムに赴いた。この地にも回帰線の枠組みで語るべき植民の歴史遺産が残存することを確認、米国への移民が現在進行形でそれにこだわり語り始めた文学は、まだ多くはないが回帰線文学に他ならないと位置づけた。ここまでの研究経過をまとめ、11月のアメリカ文学会中部支部会で発表した。 現時点では、これらの回帰線文学に共通するテーマとして、故国との分断/越境およびその受容ということが浮上する。これは故国との分断と移民国アメリカの受容、そして故国への想いを持ち続けることの受容に他ならず、さらに文化や民族の混血もその受容の一環としても捉えられよう。今後の課題は、さらに多くの地域と作品に触れて故国表象への移民作家のこだわりをより深く分析することである。
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Research Products
(3 results)