2011 Fiscal Year Annual Research Report
ジェームズ・ホッグを中心としたスコットランド文学・文化研究
Project/Area Number |
21520293
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
金津 和美 同志社大学, 文学部, 准教授 (90367962)
|
Keywords | スコットランド文学・文化 / ジェームズ・ホッグ / 農村・大衆文化 / イギリス・ロマン派 / 啓蒙主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「エトリックの羊飼い」として知られ、ロマン主義期のスコットランドを代表する農村労働者階級の詩人・作家James Hoggを取り上げ、文学作品とスコットランド農村文化の変容と保全の関係について考察することにある。この研究目的にしたがい平成23年度上半期の研究実績としては、まず、18世紀から19世紀初頭に出版されたスコットランド旅行記復刻選集の編集と解説書執筆を行った。本選集はロマン主義期のスコットランド社会の変容のみならず、Walter ScottやHoggの歴史小説の背景を知る資料として意義を持つ。また、8月末から9月初めにかけて、スコットランド国境地帯を訪れ、実地調査を行った。Hogg研究者として著名なGillian Hughes氏の指導を仰ぎ、Melrose,Selkirk,Ettrickを中心に、HoggとScottの作品や伝記において重要な場所を訪ね、資料収集を行った。下半期においては、11月の関西コールリッジ研究会において、William WordsworthのThe Excursionを中心に、スコットランド啓蒙主義及びエディンバラ出版文化の問題がいかに扱われているのか、ScottやHoggの詩作品・小説と比較分析しながら考察する発表を行った。当初はスコットランド国境地帯の実地調査の成果に基づき、歴史小説The Three Perils of Manの考察を行うことを計画していたが、予定されていた校訂版の出版が延期されたため、期待していた成果を上げることができなかった。そのため計画を変更し、Washington Irvingとスコットランド文壇との関わりに注目し、Blackwood's Edinburgh Magazineを初めとするエディンバラ出版文化において醸成された「エトリックの羊飼い」像が、いかに大西洋を越えて北アメリカの出版文化に受容されたのか、19世紀初頭の出版文化の動態とHoggの作品の近代性を明らかにすることを目的とした研究を行い、2012年6月にGlasgowで開催されるThe James Hogg Societyの定期大会で発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
James Hogg研究の一人者であり、校訂版全集の監修・編集者であったDouglas S. Mack氏の死去にともない、予定されていた校訂版作品の出版が滞っている。そのため入手できない重要な研究資料がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初はスコットランド国境地帯の実地調査の成果に基づき、歴史小説The Three Perils of Manの考察を行うことを計画していたが、予定されていた校訂版の出版が延期されたために計画を変更し、Blackwood's Edinburgh Magazineを初めとするエディンバラ出版文化において醸成された「エトリックの羊飼い」像が、いかに大西洋を越えて北アメリカの出版文化に受容されたのを含めて、19世紀初頭の出版文化の動態とHoggの作品の近代性を明らかにする研究に力点を置くことにする。
|