2009 Fiscal Year Annual Research Report
民話の芸術作品への変容とグローバル化:ブリテン諸島の「あざらし女」の民話を中心に
Project/Area Number |
21520295
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
下楠 昌哉 Doshisha University, 文学部, 准教授 (90329532)
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Keywords | 英文学 / 民俗学 / 民話 / 国際情報交換 / イギリス:アイルランド |
Research Abstract |
本研究の目的は、特定の地域で語られてきた民話が様々な文化メディアに取り込まれて芸術作品に変容しつつ、新たな存在意義を獲得している事例についてケース・スタディを行うことである。2009年8月18日から25日までスコットランドのオークニー諸島でフィールドワークを行い、プロフェッショナルなストーリーテラーから実際に「あざらし女」の民話を収集した。あざらし女はオークニーに縁ある作家たちの間では、非常に人気のあるモチーフであり、そのうちの作品のいくつかは、現在日本語でも読むことができる。こうした現状の紹介を、実際に収集した民話を英語で一言一句にわたって再現したテクストともに収めたのが、平成21年度研究成果のうち、雑誌論文の業績"Selkies in Orkney : Storytelling and the Literary Imagination"である。ただし、本研究は学際的であり、この研究業績はフィールドワークの結果を収録したため、既存の文学研究論文の形式に収まりぎらず、掲載誌においては、"Study Notes(研究ノート)"として分類されている。 本研究の副次的な目的の一つとして、海外の研究者に対して日本の現代大衆文化と西洋の伝承文化のつながりをアピールすることを挙げた。この目的は、スコットランド、グラスゴー大学で開催された国際アイルランド文学協会の大会において、現代でも版を重ねている松村みね子の海外文学の翻訳を中心とした研究発表をし、宮崎駿監督のアニメーション映画『崖の上のポニョ』もペーパーの内容に盛り込むことで充分に果たされたと考える。発表のタイトルは""Selkies" in Mineko Matsumura's Translation of Fiona Macleod : Connecting Ireland, Scotland and Japan"である。松村みね子はアイルランド文学の翻訳者として有名であるが、その翻訳作品で現代の日本で最も人気を博しているのは、スコットランド作家ウィリアム・シャープ(筆名フィオナ・マクラウド)の作品の翻訳である。シャープは民話を小説の題材によく用い、松村の翻訳には、あざらし女の民話を基にしたシャープの作品も含まれている。
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Research Products
(2 results)