2011 Fiscal Year Annual Research Report
民話の芸術作品への変容とグローバル化:ブリテン諸島の「あざらし女」民話を中心に
Project/Area Number |
21520295
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
下楠 昌哉 同志社大学, 文学部, 教授 (90329532)
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Keywords | 英文学 / 民俗学 / グローバリゼーション |
Research Abstract |
本研究の目的は、情報と資本と人がグローバルに交流する現代において、特定地域に口伝えられてきた民話が、様々な文化メディアに取り込まれ、芸術作品に変容して世界中に拡散しつつ、もともとその民話が語られてきた地域においても観光産業などと結び付いて新たな存在意義を獲得しているプロセスに着目し、その過程をはっきりと看取しうるようなケース・スタディを行なうことである。今年度は、ブリテン諸島の民話に登場する「あざらし女」がアイルランドで"mermaid"とよく呼ばれることに着目した研究成果を発表した。"mermaid"の日本語での訳語は「人魚」にほぼ確定しているため、アイルランドの詩人の詩に登場する"mermaid"はおしなべて「人魚」と訳され、半人半魚の存在として日本の読者には示される。しかしながら、原典となる詩の"mermaid"は「あざらし女」である場合や、半人半魚であっても「あざらし女」の民話のイメージが少なからず付与されている場合があるのである。この研究成果は論文"Defining Mermaids"として、査読の上、Doshisha Literature 54・55号合併号に掲載された。また、あざらし女の民話を基にしたスコットランド作家の小説の松村みね子訳による日本での受容を扱った論文"True poetic comrade"は、アイルランドとスコットランド間の文化的関係性を扱ったWilly Maleyグラスゴー大学教授とAlison Youngerサンダーランド大学教授による進行中の出版プロジェクトに採択されている。さらに、あざらし人間を扱ったスコットランド人詩人Robin Robertsonの作品について、イングランドのサンダーランド大学で開催された第9回North East Irish Culture Networkの研究発表部門で、研究発表を行った。また、アイルランドの作家James Joyceの小文にあらわれる民間伝承における幻の島について、日本ジェイムズ・ジョイス協会大会におけるシンポジウムのメンバーの一人として、研究発表を行った。
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Research Products
(3 results)