2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520296
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
竹村 はるみ Ritsumeikan University, 文学部, 准教授 (70299121)
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Keywords | 英文学 / 近代初期文化史 / 出版文化史 / エリザベス一世 / 騎士道ロマンス / パトロネージ / 宮廷文化 / パジェント |
Research Abstract |
Elizabeth Iとフランス皇太子Alencon公の結婚交渉問題、及び、カトリック大国スペインによる圧政に対して蜂起したネーデルラントへの軍事援助の是非、という二つの外交問題をめぐって枢密院内部の亀裂が表面した1570年代から1580年代にかけて、急進派プロテスタンティズムを牽引したのがレスター伯とその一派であった。本研究は、Leicester伯の出版ネットワークの解明を目的としているが、本年度は武闘派プロテスタンティズムを標榜するLeicester伯の意向を反映した作品として、Thomas Churchyard、George Gascoigneといった軍人作家による巡幸パジェントの研究を行った。巡幸は、Elizabeth Iがその治世を通して心血を注いだ一大宮廷行事であったが、女王を歓待するために巡幸先で催されたパジェントは、単に国家や王室への忠誠への表明として機能しただけではなく、地方都市や貴族が様々な主張や請願を行う場として利用された。1570年代以降のパジェントに関しては、軍事教練的な場面や戦闘場面を盛り込んだ作品が多く見られるという興味深い特徴が窺えるが、それらは女王の穏健政策に対する兵士の不満を取りこみつつ、ネーデルラントへの遠征を主張するLeicester一派による政治的プロパガンダとして機能していた可能性が高い。本年度の研究では、それが同時代に市民層の間で生じていた騎士道ロマンス・ブームと密接に連動していた可能性についても明らかにしつつ、騎士道ロマンスのリバイバルという文化現象を、宮廷貴族と市民の協働という従来は看過されてきた観点から歴史的に検証した。
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Research Products
(1 results)