2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520297
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
片山 麻美子 大阪経済大学, 人間科学部, 教授 (50183778)
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Keywords | 英米文学 / トマス・グレイ / 古詩復活 / ケルトの再発見 / ジェイムズ・マクファーソン / エヴァン・エヴァンス / ヘンリー・ローランズ / エイレット・サンメス |
Research Abstract |
平成22年度はまず、マクファーソンの『オシアン詩』をとりあげ、グレイをはじめとするイングランドの文人の対応とブレアなどスコットランド側との応酬を検討し、『オシアン詩』のケルト的性格付けに対する再評価を行った。(参考:H. Gaskill, Ossian Revisited)本研究では民族意識と民族起源論を継続して考察しているが、マクファーソンは『オシアン詩』の序論でケルトの末裔としての民族意識を打ち出している。一方でウェールズの古詩収集家は古詩の研究方法を批判し、両地域の隔たりが明らかとなった。 また、William Cowperの"Boadicea"と18世紀後半のケルト趣味について関西コールリッジ研究会で口頭発表を行ない、加筆原稿がケルト学会誌に受理された。古代ブリテンの女王を歌った頒詩はグレイやメイソンのケルト趣味とオードの系譜に連なり、さらに1780年前後のアメリカ独立戦争を背景にした危機意識と連合王国の統合意識を反映している。当時のイングランドのケルト趣味は国民意識を高揚させる意図を持っていた。 上記の他、2月に渡英し、コートールド美術館で17世紀末にHenry Cook(e)が描いたドルイドの3枚の絵画について、画像データの細部と画家名の確認などを行った。(参考:C. Brisby, "Druids at Daryton")ドルイドをイングランドの貴族や画家が注目していた証拠となる作品であり、依頼主の調査など今後も続けていきたい。またウェールズ大学のカーディフ校のE-Wyn James博士にクーパーの政治姿勢とケルト観について論文の概要を説明し助言を受けた。 研究は17世紀から18世紀末にかけての長い期間と様々な作品と作家を扱うが、これはケルトの民族起源がウェールズやスコットランドなどに限らず、イングランド人によっても主張されていた時代から、次第に周縁の地域に収斂されていった推移を具体的に追跡している事情による。個々の作品を第1次資料として検討し、ケルト観の進展を肉付けしていく作業の意義は大きいと考える。
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Research Products
(1 results)