2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520297
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
片山 麻美子 大阪経済大学, 経営情報学部, 教授 (50183778)
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Keywords | 英米文学 / トマス・グレイ / 古詩復活 / ケルトの再発見 / 18世紀イギリス / ブリティッシュネス / ウェールズ / エヴァン・エヴァンス |
Research Abstract |
平成23年度は課題研究「トマス・グレイと1760年代の古詩収集家(1)」のうち(イ)エヴァンスの『ウェールズ古詩集』とグレイの影響関係を検討した。グレイのピンダロース風オード「詩仙」はウェールズの古詩や文化再発見を鼓舞する役割を果たし、近年ウェールズの国民文学研究で注目されている。当時の古詩復活運動は連合王国の統合が進むなか、民族め歴史を振り返り、独自の文化を維持し、あるいは新しく統合された文化の創造を模索していた点で、異文化理解と政策の観点からも重要な意味をもつ。 当該研究では、ケルト再発見とブリティッシュネスの議論を踏まえ、なぜグレイがイングランド王であるエドワード1世によるウェールズの詩人虐殺の伝説を「詩仙」の主題においたかを再検討した。特にウェールズ音韻論によってイギリス統合後の新しい詩歌を模索していたグレイの詩観を独自に考察した。(1)研究の成果は"Welsh warbling in English Poetry"と題してケルト研究バンガー学会で発表が決定している。また(2)日本ケルト学会では、「クーパーの「頌詩ボアディシア」と18世紀後半のケルト趣味」と題し、クーパーのケルト主題の作品とイングランド中心的なブリティッシュネスの姿勢を考察した論文を学会誌に掲載した。他に(3)「ジェームズ・マクファーソンの『古詩断片集』覚書」と題して、『オシアン作品集』出版に重要な役割を担った『古詩断片集』の成立過程と、ブレアが叙事詩の存在を示唆した序文の文化背景を『大阪経大論集』で考察した。 これまで補助金を得て渡英し、ウェールズ国立大学の研究者から指導と助言を受けてきた。今回は、新たに「ウェールズの英語作家によるPrydeindod(ブリティッシュネス)概念」を論じた研究者から、エヴァンスの古詩収集活動についての最新の研究成果を得た。今後もグレイと古詩収集家に関する後半の研究を継続して遂行していきたい。
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Research Products
(3 results)