2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520299
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
橋本 安央 関西学院大学, 文学部, 教授 (60300274)
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Keywords | Melville / The Confidence-Man / Moby-Dick / psychiatry / madness |
Research Abstract |
米国の19世紀作家、とりわけハーマン・メルヴィルの孤児意識と暴力という大きな枠組みのもとで、メルヴィル作品を精読する作業に集中した。その過程において、狂気の主題が関連してきたため、19世紀アメリカの精神医学言説も精査した。とりわけ『詐欺師』における詐欺のありようが、聖書的な非科学的迷信もふくむ狂気言説を詐取したそれである点を明らかにし、論文集Melville and the Wall of the Modern Ageにおける第8章、"Mirrors of Madness : The Confidence-Man and 19th-Century American Psychiatry"(143-163頁所収、南雲堂)においてその成果を公刊した。 また、全体主義者として批判されることが多いエイハブ船長のありようを、精読を通じて読み直した。とりわけ対抗文化の時代以後、9・11テロル事件を経て、圧政的な暴君であるとの解釈が定番となっているエイハブ船長の暴力には、孤児にも通じる疎外意識が色濃く窺われもする。その結果、緑の再生サイクルと人類から疎外され、涙を流すことすらかなわなくなるエイハブの自意識を中心に据え、エイハブの複雑な暴力性を明らかにした。その成果は、論文「エイハブの涙--『白鯨』再読--」(『英米文学』第55巻、206-220頁所収、関日学院大学英米文学会)にて発表した。 継続中の研究として、メルヴィルの初期作品に描かれる南太平洋の風景が、新世界のそれとかさねられているところを手がかりとして、メルヴィルの原風景をたどる作業をつづけている。
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Research Products
(2 results)