2010 Fiscal Year Annual Research Report
『百科全書』ディドロ執筆項日本文研究:その「生命学」的展開
Project/Area Number |
21520318
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
逸見 竜生 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60251782)
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Keywords | ディドロ / 『百科全書』 / 18世紀フランス啓蒙 |
Research Abstract |
『百科全書』はどのようなプロセスを経て作成されたのか。辞書編纂の実際を示す関係者の直接的な証言のような資料がほとんど存在していない以上、『百科全書』生成の現場ともいうべきこの問題については、今なおほとんど推定に頼って議論するほかない。例えば、『百科全書』の項目が、誰の、どのような権限によって、いかに選択されたか。寄稿者たちの間で、項目の実際がどのように割り当てられたのか。項目の執筆にあたって、全体を統括する何らかの編集上の指針のようなものがあったのかどうか。そして個々の執筆者たちは、どのような形で執筆を進め、最終的には、いかなる意図を託して『百科全書』の実現に寄与しようとしたのか-こうした問題について答えることは、未だ少なからぬ困難がある。本研究は、ディドロによる「生命学」」(sciences de vie)の分野での『百科全書』項目寄与の具体相を明らかにし、18世紀フランス啓蒙思想におけるその射程と意義を、申請者が進めている上記のような本文批評的観点から実証的に示す。これにより、いまだ解明されない部分の多い『百科全書』期のディドロの思想的発展に関し、基礎的研究に立脚した新しい解釈を打ち出す。以上が本研究の目的である。 本年度は、前年度を継承しつつ研究活動を展開した。ディドロ自身が『百科全書』編纂初期にこれと並行して従事していたジェームズ『医学総合事典』を集中的に精査し、ディドロによる「生命学」」の分野での『百科全書』項目寄与の具体像を明らかにした。これにあたってはデジタル処理化された『百科全書』パリ版本文(慶應義塾大学所蔵パリ版)を底本にし、これまでの申請者の研究蓄積を基にした、さらに精度の高い解析に取り組んだ。 研究の結果、従来まで知られていた項目数を大幅に上回るディドロの執筆項目が、同『事典』本文の引用ないし参照によって作成されていることが初めて明らかとなった。研究成果は、申請者が監事を務める国内研究者の共同研究会である「百科全書研究会」公開、発表した。また2011年7月に開催される国際18世紀学会シンポジウム(オーストリア、グラーツ大学)において、さらに詳細に発表される。
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Research Products
(2 results)