2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21520321
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Research Institution | Heian Jogakuin(St.Agnes')University |
Principal Investigator |
高橋 義人 平安女学院大学, 国際観光学部, 教授 (70051852)
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Keywords | 庭 / ユートピア / 磐座 / ゲーテ / 無 / ディルタイ / 西田幾多郎 / 述語の論理 |
Research Abstract |
1)平成23年8月11~14日に開かれたGiG(異文化交流国際独文学会)バンコック大会において、分科会のドイツ語司会をするとともに、「庭園とユートピア」と題するドイツ語講演を行った。ここでは、西欧の3種類の庭園を比較しながら、西欧には自然支配の幾何学的・規則的庭園(フランス式庭園)と「自然らしい自然」を目指した非規則的庭園(イギリス式庭園)という相反する庭園があること、フランス庭園に見られる「自然支配」が近代化にともない誕生したものであるのに対し、産業革命が進み都市の生活環境が悪化したイギリスでは庭園は「都市」に対するアンチテーゼを意味していること、「自然らしい自然」の志向という点で日本庭園はイギリス式庭園と多くの共通項を持ちつつも、日本庭園では西欧の庭園よりも水平志向が強いことを明らかにした。大会終了後、発表原稿にさらに手を入れ、日本庭園(特に石庭)は、縄文時代からあった盤座や盤境の精神を継承しているのに対し、西欧のストーンヘンジは近代の庭園には受け継がれなかったことを明らかにした(ドイツで近刊予定)。 2)平成24年3月12~15日には立命館大学でGiG(異文化交流国際独文学会)京都大会を主催した。本大会は本来は平成23年9月に予定されていたが、福島の原発事故のため多くの外国人参加者から延期を求められ、本年3月になったものである。この大会では開会式・基調講演などのドイツ語司会の他、「ゲーテの純粋理念と禅仏教の無」と題するドイツ語講演を行った。「無」は東洋に固有のものと考えられているが、ヴァイマール時代初期のゲーテが日記や手紙にしばしば書き残している「純粋」がじつは東洋的な「無」にきわめて近いこと、この「無」や「純粋」の思想はじつは中世ヨーロッパのマイスター・エックハルトにすでに顕著に認められること、京都に数多くある石庭のなかに「無」の思想が端的に表れていると論じ、大きな反響を呼んだ。この論文も、ドイツで出版される本のなかに収められる予定である。 3)平成23年9月26日~10月1日には北イタリアのメラーノでディルタイ没後100年記念コローキウムが開かれ、日本の代表として招かれ、「西田幾多郎とディルタイ」と題するドイツ語講演を行った。西田はディルタイの生の哲学や意識の哲学を高く評価しながらも、意識の哲学をさらに推し進めたなら、自分の言う「述語の論理」に到達したはずだと考えた。述語の論理をさらに追求すると、「場所」の哲学や「無」の哲学に逢着すると論じた講演は、今回のコローキウムの白眉をなすものとして、白熱した議論が続いた。このコローキウムも論文集として今年中にドイツの出版社から刊行される予定である。
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