2009 Fiscal Year Annual Research Report
ボードレールからゾラへ、美術と文学における「モデルニテ」概念の継承と変容
Project/Area Number |
21520328
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉田 典子 Kobe University, 国際文化学研究科, 教授 (20201006)
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Keywords | ゾラ / ボードレール / 美術批評 / モデルニテ / マネ |
Research Abstract |
本研究の目的は、ゾラがボードレールから受け継いだものを明らかにすると同時に、ゾラが自身の批評活動および創作活動において、どのように同時代的な関心を推し進めていったのかを明らかにすることである。 本年は、本研究の1年目であり、関係する資料の収集を中心に行った。特に冬休み期間中にはパリ国立図書館、およびロンドンのコートールド・インスティチュート等において、雑誌資料・絵画資料の調査を行った。 また、9月には、パリ第1大学名誉教授ジャン=クロード・レーベンシュテイン教授を囲むシンポジウム「フランス近現代美術史研究の可能性」にパネリストの1人として参加し、ソラとマネについての発表を行うとともに、文学の側面から絵画研究に貢献する可能性について報告した。 本年の具体的な成果として挙げられるのは、上記のシンポジウムにおける発表をもとに執筆した論文である。マネは、ボードレールとゾラをつなぐ重要な画家であり、「モデルニテ」の探求においてもきわめ重要な存在である。本論考においては、とりわけ以下の点を明らかにした。 一般に、ゾラとマネの共闘関係は、1860年代後半がピークだと考えられているが、1870年代からマネが亡くなる1883年まで、両者にはとりわけ熱烈な共和主義者として、時代の政治的・社会的関に即した共通の主題が存在する。1870年代の印象派にとって、普仏戦争とパリ・コミューンで疲弊したパリを復興し、新しい共和国として、多様で抗気に満ちた色鮮やかな空間へと「装飾」することが問題であった。それは、マネが1879年に共和派が実権を掌握した年に、パリ市役所に提示した壁画プランに通じている。1878年にマネは《モニエ通り》連作を制作するが、そこにはゾラと共通する関心が認められる。ゾラは、しだいに純粋絵画そのものよりも、ショーウインドーや大規模なインスタレーションなどの商業美術への関心を深めていくが、ここにはゾラがボードレールから継承した「モデルニテ」の一形態が認められる。
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Research Products
(2 results)