2010 Fiscal Year Annual Research Report
『ロランの歌』データベースの構築と電子校訂法の確立
Project/Area Number |
21520331
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
小栗栖 等 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60283941)
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Keywords | 武勲詩 / 中世 / テクスト |
Research Abstract |
当初の計画とおり翌23年度中に『ロランの歌』データベースを公開すべく、校訂テクスト確認作業と、校訂テクストをめぐる諸データの整理に研究労力の大半を費やした。作業の実態は、1、写本と校訂テクストの再照合作業、2、過去の諸校訂本と校訂テクストの比較による問題点(旧来の校訂の問題の場合もあれば、私自身の校訂の問題の場合もある)の洗い出し、3、注釈の再点検、4、解釈や言語学的観点からの問題点の洗い出し、がその主なものである。なお、そうした作業の中で、さらに、いくつかのツール(校訂本や写本の表示に特化した画像表示ソフトやいくつかの電子辞書類)をさらに開発したが、それらのものを、第三者が使用し得るよう公表できるのは、翌年度以降になる。 他方で、電子校訂の結果でき上がったプレインテキストファイルを、LaTeX2eで処理可能にするための、下準備をするソフト、Scriptoriumの調整とその日本語マニュアルの執筆を行なった。そして、その過程で、マニュアルの特に前半部分で、写本内でのテクストのあり方を記述するための方法論に踏み込まねばならないことが判明した。実際、実際、今日の書籍とは大きく異なった環境下で成立した写本内のテクストを電子化するには、今日の印刷本を電子化するよりも、はるかに複雑な記述法を要するのである。そして、そうした記述法の当否を評価し得るのは、写本に慣れ親しんだ文献学者のみである。そこで、とくに文献学的な評価の対象となるマニュアル前半部分を論文の形で発表した。
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