2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520333
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
坂本 貴志 山口大学, 人文学部, 准教授 (10314783)
|
Keywords | ヘルメス的伝統 / シラー / ハイネ / 崇高論 / 宇宙論 / アタナシウス・キルヒャー / ヨーロッパ近代 |
Research Abstract |
ドイツ近代とヘルメス的伝統についての研究を行うに当たり、本研究は古典古代、ルネサンス、近代の時系の三層に現れるヘルメス的伝統を複合的に検討するという方法をとる。本年は、古典古代においてはロンギノスの崇高に着目しながら、崇高が天上界への魂の帰昇という、さまざまな思想と宗教において広く観察されるトポスと深い関わりを持つ様を考察した。また宇宙論がヘルメス的伝統を理解する上で根本的な位置づけにあるとの認識から、ルネサンス期における宇宙論の革命的変容がヘルメス的伝統に与えた影響をアタナシウス・キルヒャーの『忘我の旅』において検討した。また、近代においてはカントの『天界の一般自然史ならびに理論』を参照しながら、宇宙論が魂の不死性をめぐるヘルメス的伝統の議論といかに関わるかを考察し、これがカントの崇高論の形成にどのような働きかけをしたのかを探究した。さらに理神論が近代的な宇宙論を背景に生ずるとの仮説のもと、これを考究するための最初の手続きとして、ハイネにおける理神論ならびに汎神論の問題を検討した。以上の研究成果はワルシャワにおける国際独文学会、日本フランス語フランス文学会などで口頭発表した。また2011年3月の19世紀学学会のシンポジウムではキルヒャーの宇宙論について口頭発表をする予定であったが、これは諸般の事情により取りやめとなり、22年度中の発表はかなわなかった。ヘルメス的伝統の観点から新たな研究を行った崇高論に関しては、フランス文学、美学のそれぞれの専門家との共同研究作業も開始された。
|
Research Products
(6 results)