2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520333
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
坂本 貴志 山口大学, 人文学部, 准教授 (10314783)
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Keywords | ヘルメス的伝統 / 近代的宇宙観 / レッシング / シラー |
Research Abstract |
本研究は、ヘルメス的伝統の、ルネサンス期を媒介とした、ドイツ近代への影響を明確にし、この伝統の近代における意義を探究するのが目的である。平成23年度においては当初の計画として下記の研究計画ならびに目標を立てていた。 αプロティノスの『エンネアデス』の研究。 βパラケルススとアグリッパの思想を、イタリア・ルネサンス期の思想家、とりわけジョルダーノ・ブルーノ、ピーコ・デッラ・ミランドラの思想と比較し、ルネサンス期におけるヘルメス的伝統の基本的性格を抽出する。 γゲーテの『ファウスト』におけるヘルメス的伝統の影響を研究する。 今年度γに関してはゲーテではなく、ドイツ近代において最も重要な文学者であるゴットホルト・エフライム・レッシングを対象とした。レッシングにおけるスピノザ哲学の受容の意味を、ヘルメス的伝統の受容と変容という観点から分析した。世界を唯一神の無限に多様な表出と見る「ヘン・カイ・パン」(レッシング)の思想が近代におけるヘルメス的伝統の核心となっていることを、ケンブリッジ・プラトニズムを経由して明らかにしつつ、この思想のひとつの源泉が『エンネアデス』にあり、「ヘン・カイ・パン」はそもそも「存在の連鎖」(ラブジョイ)の伝統的観念と一体として『エンネアデス』の中で描かれ、またレッシングの受容するところとなっていること、しかし、世界像とりわけ宇宙像の、ルネッサンス期における革命が「ヘン・カイ・パン」の理解に根本的な変容をもたらしたこと(ジョルダーノ・ブルーノ)、その影響が「存在の連鎖」の表象に及んでいることを主として明らかにした。「存在の連鎖の時間化」(ラブジョイ)の観念は、レッシングばかりではなくシラーにおいても確認され、それが彼らにおける新しい哲学神学の形成要因となっていることを見いだした。本研究成果は、シラーに関しては、シェリング協会の招聰を受けて研究発表を行い、レッシングに関しては日本独文学会のシンポジウムで口頭発表を行ったほか、また19世紀学研究所(新潟大学)からの招聘を受けた国際シンポジウムでドイツ語にて発表を行った。
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Research Products
(4 results)