2010 Fiscal Year Annual Research Report
1930年代のシュルレアリスムにおけるアナキズムと個人主義
Project/Area Number |
21520342
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
永井 敦子 上智大学, 文学部, 教授 (50217949)
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Keywords | 仏文学 / 思想史 |
Research Abstract |
1) 1930年代に、急進的左翼かつスターリン主義に反対したアナキズム的傾向を持つ作家、思想家の集った雑誌『社会批評』掲載論文の傾向等を分析し、特に1933年にジョルジュ・バタイユが掲載したアンドレ・マルロー『人間の条件』書評について、同時代の作家たちによる同書の書評との比較検討を通じ、バタイユとマルローがアナキズム的テロリスムについて抱いていた共感と危惧とその理由を明らかにした。 2) 敵対関係にあったと一般に了解されているマルローとアンドレ・ブルトンの1930年代の著書を分析することによって、彼らがスターリン主義とブルジョワ資本主義を共に批判し、一種のアナキズム的個人主義に共感を持っていた点では共通性があった事を示した。 3) ジュリアン・グラック他1940年代後半から50年代初頭に、シュルレアリスム周辺にあって、アナキズム的思考や行動を取った作家・思想家の著作を、彼らのランボー、ロートレアモン論を中心に分析し、それらを19世紀末以降の各時代、さらに同時代やその後に書かれた他の作家・思想家によるそれらの作家論と比較した。それによって、彼らがこれらの作家を評価するなかで、1930年代の自らのアナキズム的思想にいかなる反省を加えたか、さらに第二次世界大戦後の政治・社会状況において、いかなる活動と文学創作が可能であり必要であると考えていたのかを検討した。 4) 1930年代に革命作家芸術家協会に所属しつつもスターリン主義を批判していたピエール・カミナードによる1930年代から1960年代の詩作品を分析し、特にその短詩の同時代批判的側面を分析した。 上記1)と3)については、論文執筆を完了した。2)については、Dictionnaire Malraux(CNRS, France)の"Malraux et le Surrealisme"の項目に研究成果を盛り込み原稿を提出した。4)は研究継続中である。
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