2011 Fiscal Year Annual Research Report
1930年代のシュルレアリスムにおけるアナキズムと個人主義
Project/Area Number |
21520342
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
永井 敦子 上智大学, 文学部, 教授 (50217949)
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Keywords | 仏文学 / 思想史 |
Research Abstract |
本年度は以下の研究を行った。 1.2010年度に引き続き、対立関係にあったとされる1930年代のアンドレ・ブルトンとアンドレ・マルローの思想を比較検討し、彼らの共産党批判の論拠のなかにある個人主義的思想やアナキズムへの部分的共感のあらわれに見られる共通性を明らかにした。研究の成果は一部Dictionnaire Malreuxの"Andre Breton"の項目の原稿への手直しに反映させた。 2.2010年度に引き続き、1930年代に革命作家芸術家協会で活動しながらも共産主義、スターリン主義を批判していたピエール・カミナードの1930年代から1960年代の試作品を分析し、カミナードの詩における個人主義的傾向のあらわれ方を明らかにした。また彼の詩学研究と短詩の分析を行い、第二次世界大戦後のアメリカで、シュルレアリスムからも影響を受けた詩人たちが書いた短詩との比較を行い、彼が用いているレトリックに見られる、個人主義的志向と他者との交流可能性の希求との共存という特徴を明らかにした。その研究の成果をカミナードの生誕地トゥーロンの市立古文書館(カミナードの資料を収集)発行の雑誌に掲載した。 3.1930年代から50年代のブルトンのテキストを分析し、そこに見られる個人主義的傾向やアナキズム的傾向のあらわれ方を明らかにし、特に以下の2点の研究を行った。(1)それを1950年代のカミュの反抗論及びシュルレアリスムの革命論批判の論拠と比較し、カミュの批判の正当性と不当性とを明らかした。この研究の成果は論文「ジュリアン・グラックのロートレアモン論」に反映させた。(2)ブルトンの個人主義的傾向とアナキズムへの共感が、無差別テロなどのアナキズム的暴力行為の肯定へとつながっているというシュルレアリスム批判への反駁を行った。この研究の成果は、「アンドレ・ブルトンとアナキズム」(『思想』掲載予定、ゲラ作成済み)に反映させた。
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