2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520345
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
初見 基 Nihon University, 文理学部, 教授 (90198771)
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Keywords | ドイツ文学 / ドイツ現代文学 / ドイツ戦後文学 / 集合的記憶 / 記憶の規範性 / 警告碑 |
Research Abstract |
本研究は,過去20年ばかりのあいだドイツで盛んになっている<集合的記憶>をめぐる議論を,戦後の文学・芸術作品と社会との相関関係という観点から位置づけ検証することを目指している。研究の遂行は,1)理論的考察,2)具体例に即した考察,3)研究の前提となる資料収集,を三つの柱として進められている。 1)理論的考察においては,まずは20世紀初頭からの思想史的文脈のなかで<記憶>の問題がどのように追究されてきたかを検討した。ニーチェ,フロイト,アルヴァクスらの所論を踏まえたうえで,とりわけヴァルター・ベンヤミンに即して考察を進めた。その過程でプルーストの<記憶>の捉え方なども参照しつつ,<想起>における主体的な行為という側面のみではなく,<思い起こさせられる>という使役的側面を理論的枠組みに組み込んでゆく構想,及び,<記憶>の隠喩的構造と換喩的構造,という対照性を手がかりに考察してゆく方向性などが獲得された。 2)具体的作品に即した考察においては,本年度においては文学作品を扱うまでには到らなかったが,とりわけ1980年代末より社会的な現象として顕著に観察される,<警告碑Mahnmal>あるいは<カウンター・モニュメント>の数々をベルリン市に限定してではあったが実地に見学するとともに,それらの建設をめぐる諸議論について検討を重ねた。 3)上記の研究遂行を支える資料収集においては,本年度は書籍として出版されている基礎的文献を理論面,実践面のふたつの系列において系統的に購入した。
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Research Products
(7 results)