2013 Fiscal Year Annual Research Report
ジャンセニスムとポール・ロワヤル:論争と霊性(1640-1662)
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21520347
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
望月 ゆか 武蔵大学, 人文学部, 教授 (30350226)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ジャンセニスム / ポール・ロワヤル / アルノー / 聖体拝領 |
Research Abstract |
サン・シランが対シルモン論争(1641)をきっかけに、断固たる完全痛悔論者に変化したという昨年度の知見を受け、その思想的変遷の具体的反映について、1643年以前に執筆された作品(オルシバル編纂のTraite de la penitence、『頻繁な聖体拝領』など)を検討した。『頻繁な聖体拝領』の異例なまでの長大な序文は、15名という異例な数の高位聖職者の認可状を求める目的で執筆されたが、これは執筆当初からの構想ではなく、シルモン論争を受けたものである。 シルモン論争と『頻繁』の関係を調べていくうちに、本書の隠れた論争的意図も明らかとなってきた。『頻繁』はイエズス会士セメゾン論駁のために執筆されというのがポール・ロワヤルの公式見解だが、実は非常に暗示的な形のリシュリュー批判も含んでいる。『頻繁』で扱われる道徳が、ボオニィに代表される弛緩主義と、比較的謹厳な道徳主義とに分裂しているのは、そのためである。リシュリューの霊性はシルモンの霊性に非常に近い。「完全痛悔の祈り」に関する章も、ボオニィ、リシュリュー両者の断罪を意図している。『頻繁』のエディション調査では、リシュリュー的テーマ(完全痛悔の祈り、小罪と聖体拝領)に対し、ゲラの段階で細心のチェックがなされていることが確認された。 また『頻繁』の主題は単なる悔悛及び聖体拝領にとどまらない。悔悛論争の背景には恩寵論の対立(ジャンセニウスのみならずカミュをも含む広義のアウグスティヌス主義陣営に対し、リシュリューを含む広義のモリナ的陣営)がある。『頻繁』をジャンセニウス/ジャンセニスムとは無縁としたオルシバルの立場は再検討の必要がある。 黎明期ポール・ロワヤルの思想は、とくに1645年以降のジャンセニスムの恩寵論と比較すれば確かに穏健だが、しかし既に黎明期からジャンセニスム論争が始まっていることにも注目しなければならない。
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Current Status of Research Progress |
Reason
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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