2009 Fiscal Year Annual Research Report
精神分析と自伝―ジークムント・フロイトとルー・アンドレアス=ザロメの比較研究
Project/Area Number |
21520349
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
広沢 絵里子 Meiji University, 商学部, 教授 (20277718)
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Keywords | 文学一般 / 独文学 / 精神分析 / 自伝 / フロイト / ルー・アンドレアス=ザロメ / アイデンティティ / 記憶 |
Research Abstract |
(1)2009年度は「フロイトにおける反自伝・反伝記的要素」という問題領域を重点的に扱い、フロイトの著作から、人生史のモデル、幼児期記憶とアイデンティティの構想に関連したテクストの分析にあたった。さらに、19世紀後半から20世紀前半の自伝と記憶に関する言説(ディルタイ、G.ミッシュ、オットー・ヴァイニンガー、エビングハウス他)について調査し、規範的な人生史のモデルの措定を試みた。その結果、フロイトの人生史モデルは規範的な人生史に対立し、これを解体するベクトルを示していることが確認できたが、彼の自伝・伝記ジャンルに対する懐疑が、とりわけ歴史記述の前提を突き崩す論理構成に表明されていることが分かってきた。下記(4)の学会発表は、その成果の一部である。(2)自伝論、および、近年の精神分析と文学との関係を論じた研究書等を中心に文献収集を行い、最新の研究動向を把握した。(3)ドイツの精神分析関連研究施設において調査を行った。「ベルリン精神分析研究所(カール・アブラハム研究所)」では、アーカイブの利用だけでなく、精神分析運動史の研究者との交流・情報交換に努めた。(4)日本独文学会でのシンポジウム「Auto-/Biogarphie. Erzaehltes Selbst, erinnerte Bilder(自伝/伝記 語られた自己、想起されたイメージ)」において、「Ein Gegenkonzept zur literarischen Autobiographie? Freuds Auseinandersetzung mit Kindheitserinnerungen(反自伝的コンセプト?フロイトの幼児期記憶論について)」という題で学会発表を行った(ドイツ語発表)。フロイトの反自伝的契機について、彼のレオナルド・ダ・ヴィンチ論とゲーテ論における幼児期記憶概念を手がかりに考察した。本発表をもとにした論文は2010年5月に刊行される予定である。
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Research Products
(1 results)