2009 Fiscal Year Annual Research Report
ケベックを中心とする仏語圏文学のトランスミグランス-移民作家受容の比較研究
Project/Area Number |
21520357
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
真田 桂子 Hannan University, 流通学部, 教授 (60278752)
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Keywords | ケベック / トランスミグランス / 移民作家 / フランス / ライシテ / 移民統合政策 / 仏語圏文学 / 比較研究 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、カナダの仏語圏であるケベックにおいて移民作家とその文学が独特の存在感と影響力をもちとりわけ二十一世紀に入ってトランスミグランスと呼ばれる新しい潮流を生み出していることに注目し、このキー概念をもとに主にケベックとフランスの対比を中心に、ベルギー、スイスの状況も参照し、それらの仏語圏諸国の文学において、各々の地域の社会的状況や文化的価値観を背景に、移民作家と文学がどのように受容され位置づけられその国や地域の社会にどのような影響を及ぼしているか、について分析と考察を行う比較研究である。 本年度は、ケベックとフランスとの比較研究に着手し、移民作家とその文学を考える上で重要な背景となる、二つの社会の移民の統合政策と理念の違いを明らかにすることを目指した。それぞれの社会の統合理念を象徴的に表しているものとして、近年ケベックで注目を浴びたLes accommodements raisonnables、いわゆる「良識ある妥当性」とよばれる文化的寛容性をめぐる議論と、フランスにおけるライシテ、すなわち公共の場での非宗教性をめぐる議論に注目し、その比較検討を行うことに努めた。まず「良識ある妥当性」の議論とライシテ関連の最新の文献を入手し、その解読と分析に着手した。それら文献のいくつかの先行研究のなかで、すでにフランスや日本の研究者が、それらの議論の比較研究の重要性を指摘しており、当該研究の方向性が的確であると確認された。また様々な意味において、ケベックの「良識ある妥当性」の議論の先進性が注目されているが、この議論の全容とそれが及ぼした影響については、先行研究に続いてさらに詳細な分析が必要であることが認識された。
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