2010 Fiscal Year Annual Research Report
白居易を中心とする中唐「風流」文学の展開に関する研究
Project/Area Number |
21520378
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
諸田 龍美 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (20304701)
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Keywords | 中国文学 / 白居易 / 風流 / 恋情 / 多情 / 「長恨歌」 / 「李夫人」 / 好色 |
Research Abstract |
平成22年度の研究によって、以下の諸点を明らかにすることができた。 1、元〓・白居易の詩に用いられる「此恨」の語は、〈愛する者との死別の悲しみ〉という、特殊かつ限定的な意味において使用されおり、また、〈そうした悲しみは、誰の身の上にも普遍的に生じうるものである〉との認識が、元白両名の間では、強く意識化され、共有されていた。 2、詩語「此恨」を含む元白の六首の詩は、相互に密接な内在的連関性を有しており、これらは、一連の作品として、包括的に解釈されなければならない。 3、こうした点を前提として新楽府「李夫人」の「此恨」及び「長恨」の概念を再検討した場合、そこには以下のような両義性を認めることができる。すなわち、(1)死別した〈李夫人〉や〈盛姫〉に対する、〈武帝〉や〈穆王〉の恋情(此恨)が、それぞれに永続する、という〈個別的永続性〉、および(2)〈愛する女性と死別した男の悲しみ(此恨)〉が、〈個人や時代を超えて繰り返される〉という〈通時的普遍性〉、の二義である。 4、「李夫人」との密接な内在的連関性を考慮した場合、これに先立つ作品ではあるが、「長恨歌」における「長恨」の概念にも、同様の両義性が、遡及的に内包されていた、と考えるべきである。 また、平成22年度には、本研究課題と関連して発表してきた研究代表者のこれまでの論文を、学術図書『白居易恋情文学論』としてまとめ、公刊することができた。
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