2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520387
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
須藤 直人 立命館大学, 文学部, 准教授 (60411138)
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Keywords | 南洋群島 / パラオ / ポストコロニアル / 異人種間恋愛譚 / 中島敦 / バイ / リー・ブー / ストーリーボード |
Research Abstract |
1、日本統治期の「南洋」と日本文化のかかわりについて (1)第一次世界大戦後から第二次世界大戦中までの時期において、(1)南洋群島ミクロネシアの「同化政策」を背景に生まれた、「南島」を舞台とする著名作家達による小説「俊寛」や、当時の流行歌「酋長の娘」、人気を博した漫画物語「冒険ダン吉」は、いずれも、「異人種間恋愛譚」の物語構造とかかわるポカホンタス、ゴーギャン、ベティ・ブープといった西洋世界の植民地表象を織り込んでいること、(2)西洋・日本の植民地表象の影響下にありながら、それに抵抗する重要な要素を、パラオの伝統家屋バイに描かれている、結婚にかかわる物語(ストーリーボード)を下敷きとした中島敦の小品に見出せることを明らかにした論文を発表した。ポストコロニアル的観点から「島と文学・文化」をテーマに、欧米ではなく日本の文学・文化を題材として、英語で論じ、国際ジャーナルに掲載された。 (2)中島敦の南洋群島での体験・収集資料を素材とする作品は、パラオの絵物語から素材上の影響を受けているだけでなく、パラオ文化と構造上の共通点を見出すことができることが明らかとなった。また中島の小笠原記録は、小笠原旅行記としては異彩を放っている。以上の内容の論文を執筆中である。 2、現代のミクロネシアと日本文化のかかわりについて 18世紀末ロンドンで客死したパラオ人リー・ブーは、独立後のパラオにおいて、国民のアイデンティティ・シンボルとして扱われ、当時ロンドンで話題となった「高貴な未開人」のイメージは、現代のパラオ人及び外国人観光客にも強い影響を与えている。20世紀末のパラオと日本におけるリー・ブー表象を比較し、リー・ブーを介してわかるパラオと沖縄の文化的共通点に着目することにより、「ポストコロニアルの太平洋世界におけるイメージとアイデンティティ」という観点から論考を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」に沿って研究調査を進めることができ、成果の一部を論文として発表することができた。他の成果についても論文執筆を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究の目的」に沿って研究を進める。日本、欧米、太平洋諸島それぞれの側の文献や映像資料の調査・収集と分析に努める。比較文学・文化研究、ポストコロニアル文学・文化研究の、国内外の動向に気を配り、日本比較文学会、東京大学比較文学会、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のポストコロニアル文学研究所などを通して情報収集に努める。
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Research Products
(1 results)