2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520392
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 大厚 Tohoku University, 大学院・国際文化研究科, 准教授 (00272021)
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Keywords | 言語学 / 統語論 / 比較統語論 / 省略 / 空主語 / 空目的語 |
Research Abstract |
本研究は、日本語に観察される主語・目的語の省略現象を比較統語論の観点から分析し、それに基づき複数の言語に見られる空主語・空目的語と日本語の省略によって生成された空主語・空目的語との類似点・相違点を精査し、それらの背後にある普遍文法の原理・パラメーターを解明することを主たる目的とする。 平成21年度においては、主語・目的語省略が極小主義統語理論のもとではどのように分析されうるのかを明確にすることと、関連するデーターを中国語、トルコ語などの複数の言語から入手しそこから一般化を得ることを計画していた。 平成21年度の研究実績としては、主語・目的語省略について書かれた十数篇の主要な先行研究論文を吟味し、理論的基盤、問題の所在、議論の在り方などの理解に努めた。特に、当該現象を自由語順現象と一致現象に関連づける先行研究を吟味し、それぞれの妥当性をトルコ語と中国語のデーターに照らし合わせて検証した。 具体的には、トルコ語は日本語と同様自由語順言語であるにもかかわらず、主語の省略を許さないという新しい事実を指摘し、これはトルコ語が主語と述語の一致を示すことに関係づけて説明されるべきことを論じた。また、中国語は日本語と異なり自由語順言語ではないにもかかわらず、目的語の省略を許すことから、やはり主語・目的語省略と自由語順現象とを相関させる分析は妥当でないことを論じた。 上記の研究成果の意義としては、表面的には似ている言語(日本語、トルコ語、中国語)でも、それらの空主語・空目的語は異なる特性を持っていることが明らかとなったことである。この相違を一致現象を含め他のどのような特性と関係づけて分析するか引き続き研究を進める。
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Research Products
(4 results)