Research Abstract |
本研究課題は,対面コミュニケーションで用いられる,言語やジェスチャー,視線方向といった複数の表現モダリティからなる情報伝達のための単位としての「発話」を対象に,日本語と日本手話の「発話」に含まれる時間的構造を分析することを目的としている. 本年度は,まず,分析のための理論的枠組みを整理する目的で,マルチモーダルインタラクションの分析と手話の言語学的記述に関する方法論について,主に複数の著書を通じてまとめた. 次に,こうした理論的な検討に基づき,大きく以下の3種類のデータ収録と分析を行った. 1.身体動作を伴う日本語会話:ポスター発表という情報媒体のある環境での会話と,グループホームのような生活環境での日常動作を伴うインタラクションのデータを収録し,言語的発話とジェスチャーや身体動作との共起関係や連鎖関係を分析した. 2.日本手話会話:日本手話母語話者間での二者対面会話と,テレビ会議システムを介した遠隔会話のデータを収録し,口形やうなずき,視線などの非手指動作を重視しつつ,手話のインタラクション的構造を分析した. 3.言語を中心としないインタラクション:日本語・日本手話という言語を中心としたインタラクションとの比較のため,サッカーという身体動作のみから構成されるインタラクションに対して,マルチモーダル連鎖分析の手法を適用した分析を行った. これらの研究成果を社会言語科学会,日本手話学会,日本認知科学会などの関連学会において発表すると同時に,その分析内容について,研究代表者,研究分担者,連携研究者,研究協力者の間で緊密な意見交換を行い,次年度以降の研究のための課題を明らかにした.
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