2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520408
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大津 隆広 Kyushu University, 言語文化研究院, 准教授 (90253525)
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Keywords | Anaphoric Expressions / Procedure / Relevance Theory / Metarepresentation / Interpretive Resemblance |
Research Abstract |
照応表現は、グライスの量の第二公理(必要以上の会話の貢献をするな)およびLevinsonのI原則(言わない事は言わなくてもわかることだ)という会話の方略が慣例化された言語の仕組みである。この仕組みにより、照応表現(代名詞や省略)を含む発話を解釈する聞き手は、最も処理労力を要さない形で(最も関連性が高い方法で)意図された指示対象を同定することができる。本研究は、関連性理論の枠組みで照応表現の認知プロセスを解明するものである。照応表現の理解は、代名詞や省略形という言語的糸口をもとにその指示対象を探せという指示を与えるという意味において、意味拡充(saturation)という語用論的プロセスによるものである。先行研究から得た、照応には言語的制御と語用論的制御の双方が関わっているという結論をもとに、照応の理解のプロセスには原発話者の発話に対する聞き手のメタ表示能力が関わっていると考える。つまり、照応表現に記号化された概念表示の操作としての手続きとは、原発話者の発話のメタ表示の中に意図された指示対象を探すことができるということである。Hedley(2005)は、代名詞の手続き的意味の中に指示対象の性(gender)を規定している。こうした見解を考慮するならば、省略においても指示対象の統語的特徴を含めた手続きの規定が必要であるかもしれない。照応表現の手続きの定義を高次と低次に分ける必要があるかどうかなどの議論に関しては、代名詞と省略の手続きの違いの深い考察とともに、次年度の課題の一つとしたい。
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Research Products
(2 results)