2010 Fiscal Year Annual Research Report
ソ連崩壊後の中央アジア諸国における言語動態に関する調査研究
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21520427
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
臼山 利信 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (50323225)
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Keywords | ソ連崩壊 / 中央アジア / 言語動態 / ロシア語 / ロシア語母語話者 / 世代的継続性 / ドーナツ化現象 / 1言語中心主義社会 |
Research Abstract |
ソ連崩壊(1991)を契機とするロシア語の社会的機能域の縮小は,ロシア連邦を除く他の旧ソ連地域において顕著である。本研究プロジェクトの主たる目的は,特に中央アジア諸国を研究対象として言語動態という観点からロシア語と国家語(基幹民族語)の機能的転換過程を究明することである。 平成22年度は,キルギス共和国のビシュケクにおいて20~60代のロシア系住民7人とキルギス政府国家語委員会委員長らキルギス語普及推進者5人を対象に,使用言語等に関する対面式の聴き取り調査を行った。またタジキスタン共和国のドシャンベにおいて40~60代のロシア系住民2名,非タジク系住民6人及びタジク系住民5人を被験者として同様の聴き取り調査を実施した。さらにウズベキスタンのタシケントにおいて20~60代のロシア系住民7人,アルメニア系住民1人,朝鮮系住民1人に対して聴き取り調査を実施した。その結果,特に各共和国の国家語を十分に習得していないロシア系住民を取り巻く雇用環境がますます厳しさを増していることなどから,特に20代,30代の若い世代によるロシア(やカザフスタン)などへの国外移住が活発化している一方,在住の50代以上のロシア系住民は国外移住を避け,留まる傾向のあることが判明した。言わばロシア系住民の人口構成におけるドーナツ化現象が生じており,都市部ですら,ソ連時代のようなロシア語と基幹民族語の2言語併用社会から基幹民族語による1言語中心主義社会への構造転換が着実に進み,ロシア語母語話者の世代的継続性の断絶という実態が浮き彫りとなった。 研究成果の一部については,2回の国際学術会議(キルギス国立大学,タシケント国立東洋学大学)において口頭発表し,大会報告集に掲載された。またマイノリティー民族の言語・文化の保持と消失に関する特別公開講演会を4大学(キルギス国立大学,キルギス・ロシア教育アカデミー,ロシア・タジク・スラヴ大学,中央アジア大学[タジキスタン共和国])で実施した。
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